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貿易赤字の金額がジワジワと拡大。その先に見えてくるのは経常赤字への転落

 

 財務省は11月20日、10月の貿易統計を発表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆906億円の赤字となり、過去3番目の水準となった。赤字は16カ月連続で、先月に引き続いて過去最長を更新している。
 日本はすでに恒常的な貿易赤字体質になっており、赤字が継続すること自体は驚くべきことではない。また今月は先月に比べて輸出が金額、数量とも増加している。だが、一方で輸入の増加も大きく、貿易赤字は拡大傾向が続いている。このまま赤字拡大が続けば、やがて経常収支も赤字に転落してしまう可能性が出てくる。

 日本は震災以降、恒常的な貿易赤字が続いている。一方、日本には、これまでに蓄積した豊富な外貨の運用で得られる金利・配当収入(所得収支)があり、この金額は貿易赤字を上回っている。
 日本が貿易赤字であるにもかかわらず、経常黒字を維持できているのはそのためである。日本の所得収支は平均すると、毎月1兆3000億円ほどになり、10月の貿易赤字額である1兆906億円を上回っている。

 所得収支は安定的な金利や配当による収入なので、すぐになくなってしまうことはない。したがって、貿易赤字を現在の水準でとどめておくことができれば、当分の間、日本は経常黒字を維持することができる。だがこの貿易赤字の額がジワジワと上昇を続けているのだ。
 貿易は季節によってブレが大きいので、毎月の生データだけを見ていると、全体的なトレンドが分かりにくい。だが、季節要因を反映させた季節調整済みのデータを見てみると、貿易赤字は毎月着実に増加するトレンドを描いている。もしこのままのペースで貿易赤字が拡大した場合には、早ければ来年の8月頃には、経常収支も赤字に転落する可能性がある。

 経常赤字は必ずしも悪いことではない。経済学における国際収支の定義を考えれば、国際収支における赤字黒字は、単なるお金の出入りを示しているだけなので損得に関するニュアンスは含まれていない。だが現実問題として、日本が経常赤字に転落することのデメリットは大きい。
 これまで日本は数十年にわたって経常黒字を続けてきており、経済や社会の基本構造もそれを前提に組み立てられている。急激な国際収支の変化は大きな混乱を招く。また政府の財政赤字が巨額であることや、高齢化の進展で貯蓄率の低下が必至となっている現状を考えると、経常赤字への転落は金利など金融市場にも大きな影響を与えることになる。最終的な経常赤字への転落は不可避としても、その変化はなるだけ緩やかな方がよい。

 経常赤字転落を防ぐためには、輸出を拡大するか、投資収益を拡大するかの2つしかない。日本はすでに成熟国家であり、韓国や中国、あるいはASEAN各国と、価格競争力で勝負する国ではないし、また現実的にそれは不可能である。近年、日本の製造業が振るわないことから、韓国や中国を過度にライバル視する風潮があるが、本来、日本は両国と同レベルで争うようなポジションであってはいけないのである。日本の製造業は、高付加価値分野にシフトするのが本来の姿であり、そうであれば劇的な輸出増加は望めないと考えるべきだ。

 投資収益の拡大は、海外M&Aなど直接投資の増加によってある程度、現実的な増加を見込むことができる。だが海外投資を活発にするためには、国内市場の外国資本への解放も併せて必要になる。両者は一見無関係に見えるがそうではない。国内市場に対する外国からの参入が活発でない国は、総じて外国への投資も活発ではないという現実がある。以前から叫ばれていることではあるが、国内市場の規制緩和や外国への市場解放は、国際収支という観点からも必要なのである。

 本格的な貿易赤字転落から、2年半が経過した。ようやく貿易収支の状況が安定してきた段階だが、はやくも日本経済には次の関門が迫ってきている。

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