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年金運用改革の最終報告書まとまる。国内の景気対策に年金が利用される危険性も

 

 公的年金の運用改革を議論する政府の有識者会議は11月20日、国債を中心とした従来型ポートフォリオの見直しや、運用・管理体制の再構築を求めた最終報告書を提出した。インフレの到来を見据え、日本の年金運用が、とうとう方向転換を開始する。

 日本の公的年金はこれまで基本的に国債を中心に運用を行ってきた。報告書では「インフレ環境へと移行しつつある我が国経済の状況を踏まえれば、国内債券を中心とする現在のポートフォリオの見直しが必要」と述べ、日本経済がインフレに向かいつつあることを明言し、国債中心の運用からの脱却を求めている。

 具体的な運用対象としては、REIT(不動産投資信託)、インフラ投資、ベンチャーキャピタル、PE(プライベート・エクイティ)、商品(コモディティ)といった各種リスク資産が列挙されている。また運用担当者が積極的に運用に関わり、インデックス(日経平均などの指標)を上回るリターンを目指す「アクティブ運用」の比率を上げるべきとしている。

 今後、日本がインフレになるとすれば、現金や債券を保有していることは確実に損失につながる。資産価格の上昇の恩恵を受けるこれらの金融商品を投資対象に加えることはパフォーマンスの向上につながり、最終的には日本の年金の運用状況の改善に寄与するだろう。

 だがこうした国債からの脱却は、当然リスクを伴うものであり、また多くの課題もある。例えば、日本の株式は長期的には平均6%程度の期待リターンがあり、リスク(標準偏差)は20%程度といわれている。これは分かりやすくいうと、毎年平均6%程度の利益が期待されているが、約30%の確率で2割以上損失を出す可能性があることを示している(逆に2割以上資産が増えることもある)。

 このように聞くと、こうしたリスク資産に投資しても大丈夫かと思う人がいるかもしれないが、他に選択肢はないというのが現実だ。
 インフレが進むのが確実であれば、国債を持っているとほぼ100%の確率で損失を出してしまう。また日本は高齢化が急速に進んでおり、年金の徴収額よりも支給額の方が圧倒的に多い。日本の年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産は現在120兆円ほどあるが、ここの資金は毎年3兆円から4兆円ずつ減少している。何もしなくても、単純計算であと30年から40年で運用原資が底をついてしまうのだ。
 また高度な運用を行うためには、人材の確保が重要とされ、高い報酬を払って専門家を雇ったり、外部の運用会社に委託することも検討されている。だが年金という巨額の資金運用は金融機関にとって大きなビジネスチャンスであり、この運用業務をめぐって政治利権化してしまう危険性もある。

 日本の資産価格が今後、インフレ率以上の堅調な上昇を続ければ、米国のように株高によって年金生活者が大きな恩恵を受けるという社会が実現できるかもしれない。運用体制やポートフォリオの見直しは確かに必要だが、何より重要なのは日本経済が今後、順調に成長を続けることができるかという点である。
 アベノミクスの成長戦略は、従来型産業の財政支援に重点が置かれており、規制緩和には消極的だ。それはそれで、ひとつの見識なのかもしれないが、株式市場にとっては明らかにマイナスとなる。規制緩和が進まない環境では、株式やベンチャーキャピタルのパフォーマンスは向上しない。

 さらに報告書では、海外運用の比率を高めることについて、分散投資の観点から有効としながらも、国内経済に影響を与える可能性があるとの指摘も行っている。この記述は、状況によっては、海外投資の方が運用上有利であっても、国内の経済対策のために年金が利用されかねない危険性をはらんでいる。今後の日本における年金運用は、おそらくいばらの道となるだろう。

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