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中国が国家安全委員会を設置した真意。日本との対決か治安維持か?

 

 中国共産党は、11月12日に閉幕した党の重要会議である第18期中央委員会第3回全体会議において、国家安全委員会の設立を決定したが、日本ではその真意について様々な憶測が飛び交っている。

 日本の報道で目立つのは、国家安全委員会は、米国の国家安全保障会議(NSC)を意識した「外交・安全保障政策の司令塔」になる組織という解釈である。
 NSCは安倍政権も導入を目指して準備を進めているところである。国家安全委員会は日本版NSCに対抗したものであるという報道や、日中双方に安全保障に関わる新機構が設立されることで、日中間の軍事衝突の可能性が高くなるという欧米メディアの指摘もあった。
 一方で、国家安全委員会は、思想統制や反政府活動の弾圧など、むしろ国内の治安対策に目が向けられているとの指摘もある。当然、その背景にはウイグル族による爆破事件など、国内における反政府活動の激化がある。

 中国は共産国家であり、統治に関する原理原則が民主国家とは異なっている。中国の政治を理解するためには、このあたりの事情をよく考える必要がある。
 民主国家の場合には国家の主権者は国民だが、中国は共産党が暴力革命で独裁を維持しているため、主権者は共産党ということになる。日本の政府が国民から付託を受けて行政サービスを行っているのと同様、中国は共産党の指示で政府(国務院)が行政活動を行っている。共産党は主権者なので、政府よりも立場が上だ。

 だが政府は軍隊や警察といった「暴力装置」を保有しているので、いつ共産党を裏切るか分からない。このため、共産党は人民解放軍の権限だけは国に移管せず、軍隊を自らの手で管理している。少々極端な説明をしたが、要するに中国共産党と政府は一体として活動していながらも、一定の緊張関係が存在するということである。また現在のところ、国務院(政府)のトップである李克強首相と党のトップである習近平総書記とは対立関係にある。

 新設される国家安全委員会の詳細は明らかではないが、「国家」という名称がついていることから、政府側の組織である可能性が高い。
 香港メディアの報道では、国家安全委員会には、公安部(警察)、国家安全部(諜報活動)、外交部(外務省)、司法部(法務省)など、治安維持に関係する部署が多く含まれているという。また党の組織も関係しており、人民解放軍総参謀部第二部(諜報活動を担当、米国でいえばCIA)、第三部(電子諜報を担当、米国でいえばNSA)、党対外宣伝弁公室(メディア統制を担当)などが含まれている。
 これらの顔ぶれを見ると、どちらかというと内向きの治安維持や国民の監視、テロ対策というニュアンスが強い。また国家安全委員会の主要メンバーには、党の最高指導部から習近平氏を中心に4名が就任すると見られているが、その中には、党の思想統制の責任者である劉雲山氏の名前もある。

 一連の情報を総合してみると、習近平氏は、国内の反体制活動にかなり神経質になっており、政府側の治安組織をより強力に党が掌握し、政権の意向を強く反映させたいという意向を持っているように見える。日本版NSCに対抗したというよりは、もっと後ろ向きな理由である可能性が高いようだ。

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