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コメ農家の平均的な農業収入はわずか年50万円。減反廃止以前に農業は崩壊している

 

 政府与党は11月25日、コメの生産調整(いわゆる減反)の見直しを柱とする農政改革案を了承した。減反に応じる農家に支給する補助金を来年から半額にし、最終的に補助金を廃止する5年後まで継続する。
 一方で、転作補助金を拡充し、コメからの転作を促す。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)を見据えた措置だが、農家への補助金の総額は増えるという試算があることや、農家の競争力強化にはつながらないとの見方もあり、今後も議論を呼びそうだ。

 現在、減反に応じている農家には、10アールあたり年1万5000円を支給しているが、これを来年度から7500円に半減する。一方、主食用のコメ以外への転作を行う農家への補助は、現在10アールあたり8万円だが、これを10万5000円を上限に増額する。
 ただ、コメはもっとも栽培しやすい農作物のひとつであり、野菜など他の農作物の転換は現実的に難しい。ここで想定している転作とは主食用のコメから飼料用のコメへの転作であり、実質的に農家が稲作を継続するという状況に変わりはない。さらに農地を維持するための補助金も増額となる。

 減反政策の廃止は、TPPの導入によって競争の激化が予想されるため、大規模農家や農業法人へ農地を集約化して日本の農業のコスト競争力を強化することが本来の目的である。だが現実には、国際競争に耐えられる生産力を持つ優良な農地は少なく、多くの農地が集約化の対象にならない可能性がある。
 減反補助金を減額する一方で、飼料用のコメへの補助を厚くすることで、零細コメ農家の経営支援は従来通り継続するという今回の施策は、農地集約化が簡単には進まないという現実を政府もよく認識していることを示している
 農水省では、今回の減反見直しを受けて飼料用のコメに転作した場合、農家の農業所得は1割ほど増えるとの試算を行っている(厳密にはモデル集落全体の所得で個別所得ではない)。一部からはTPPを隠れ蓑にした農家へのバラマキと批判する声も出ている。

 ただ大きな視点で見れば、農家への支援継続はあまり大きな問題ではなくなりつつある。現在の平均的な兼業農家の年収は450万円ほどだが、このうち農業からの収入は50万円に過ぎない。200万円が勤労所得で、残り200万円は年金収入である。農業所得が1割増えるといっても、全体から見ればたかが知れている。

 転作支援という名目に形を変えた支援は継続されるが、高齢化した農家には跡継ぎがいないところが多い。時間とともに農家の数は減っていき、最終的には競争力のある農地だけしか残らないことになるだろう。すでに日本の農業は崩壊しているといってよく、今回の施策はその変化を多少緩やかなものにするものでしかない。20年後にはブランド米を生産する大規模農家だけが存続しているかもしれない。

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