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特定秘密法案が衆院を通過。この法案の最大の問題点は「知る権利」ではない

 

 特定秘密保護法案が11月26日、衆院本会議において自民、公明、みんなの党による賛成多数で可決した。参院での審議を経た後、今国会中に可決成立となる公算が高まった。

 特定秘密保護法案については、法案の国会提出前から賛否両論が出ており、国会における徹底した議論が求められていた。
 だが「情報漏洩を防ぐために法律は必要」「国民の知る権利が侵されるので反対」という、単純化された対立図式に終始し、中身のある議論が行われないまま法案は可決された。

 この法案の最大の問題点は「国家にとっての利益」と「公務員にとって利益」の区別が曖昧になってしまうという点である。おそらくこの法案を推進している議員の多くも、両者の区別が出来ていない可能性が高い。この区別が明確になっていないからこそ、国民の知る権利がないがしろにされる可能性が出てくる。

 安全保障の分野において機密を要する事項というものが存在し、それを厳重に管理する必要があることについて意義を唱える人など、ごく一部を除いて存在しないはずである。だが国益上特定の事項を機密にすることと、公務員による国益を損ねるような行為を機密にすることは容易に混同される。自由に機密を指定できる範囲が曖昧であればあるほど、それは不正の温床となるのだ。

 したがって、どんなに機密性を要求される事項であっても、第三者による検証手段を残すとともに、できるだけ早い時期にすべてを公開することが、国益という観点で非常に重要なことであると認識されている。大量の核兵器を保有し、世界各国で諜報活動や軍事活動を行う米国ですら、機密扱いにする期間は最長25年を原則としており、第三者による検証システムを設置している。これはすべて国益のためである。

 だがこの法案では、第三者の検証システムの設置は検討事項に過ぎず、指定期間は最長60年という非常に長いものとなっている。なぜ第三者によるチェック機能がなく、指定期間が60年もの長期間であるのかは明らかである。この法案が、国家の利益を保護するためのものではなく、多分に公務員の利益を保護するためのものだからである。

 現状の法案では、特定官庁の公務員が、日本と敵対する国に利益供与を行っても、特定秘密がカベになり、これを明らかにしたり、摘発することができなくなる。しかも60年も経過した後では、当事者の多くは死亡している可能性が高く、その責任を追及することすらできない。

 あらゆる政策がそうなのだが、「国民」対「国家」という対立図式になることはそれほど多くない。現実には「国民」対「公務員」、あるいは「公務員」対「公務員」という利害関係になることがほとんどなのだ。そうであればこそ、国民から選挙で選ばれた国会議員や大臣には大きな権限が与えられているのである。
 本来であれば、こうした法案についてもっとも強い懸念を抱くのは公務員を監督する立場である国会議員であるはずだ。だが議員の発言を聞いていると、それはむしろ、監督される側の公務員の思考回路と重複している。

 この法案の最大の問題点は中身の文言にあるのではない。国家権力におけるこうした基本的な図式について、国民から選ばれている国会議員が明確に認識していないという現状にある。そしてその議員を選んだのはほかならぬわれわれ国民自身である。

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