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「焼け石に水」にすらならない企業の交際費非課税案。もはや日本経済は末期症状

 

 来年4月の消費税増税対策の一つとして、大企業における交際費の一部が非課税となる可能性が高まってきた。政府は12月にまとめる2014年度税制改正大綱に、交際費の非課税措置を盛り込む。

 現在の税制では、資本金1億円以下の中小企業に限り、年間800万円まで交際費を課税対象から控除することができる。一方、大企業は交際費の全額が課税対象となっている。政府・与党では資本金1億円を超える大企業についても中小企業と同様に扱う方針だという。

 この措置は、景気対策として交際費の控除を求める声が高まってきたことが背景にある。
 だが、こうした声は多分に、バブル期などを懐かしむ感傷的なものでしかないというのが現実の姿である。大企業の交際費を非課税にしたところで、経済全体への影響はたかが知れているからだ。

 交際費は税金で落とせるので積極的に支出するというイメージがあるが、実際にはそうでもない。交際費を支出している企業は全国に約230万社があるが、交際費が課税対象となる大企業はわずか2万社と100分の1以下しかない。だが交際費全体に占める大企業の割合は20%以上を占めている。つまり税金の控除にならない大企業の方が圧倒的に多くの交際費を使っているわけである。
 当たり前のことだが、儲かっているから交際費を使うのであって、儲かってもいないのに、税金が控除になるからといって交際費を使うわけではないのだ。オーナー社長が経営する中小企業はその傾向が強いが、すでに経営の限界一杯まで交際費は支出している可能性が高い。大企業の控除枠を拡大したところで、交際費の支出が大きく増える可能性は低いと考えるべきだろう。

 また金額のインパクトもそれほど大きくない。資本金1億円超で、かつ利益を計上している企業の数は1万2000社で、交際費の総額は4600億円である。これらの企業に対して中小企業と同じ800万円を上限とする控除が設定された場合、企業側のキャッシュフローは約480億円増加することになる(つまり税収が同額減る)。従来のキャッシュフローを基準とした場合、理論上、企業はこの金額分まで交際費を増額することができるので、最終的には交際費が4600億円から約5000億円程度に増えることになる。

 8%への消費税増税では、約6兆円の税収増が見込まれている。逆にいえば、市場から6兆円が消えるわけだが、その代わりとして、480億円の交際費増額というのでは、あまりにも釣り合わない。要するに交際費の控除拡大というのは、気分の問題でしかないのだ。

 気分がよくなるだけならそれでもよいのだが、交際費の控除が景気対策として浮上する背景には、もっとやっかいな問題が横たわっている。つまり、交際費の増額という、一種の虚構にすがりたいという意識が、国民の中に出てきているのである。

 日本はすでに成熟国家であり、中国や韓国のような発展途上国ではない。企業中心社会で、外食産業や小売店が、接待や贈答でビジネスを成り立たせるというような時代はとっくに過ぎ去っているはずだ。個人消費の質や量をどのように継続的に拡大していくかという議論が必要な時代に、交際費の増額を切望するというのは、アナクロニズム以外の何物でもない。日本の国力低下、とりわけ日本人のメンタリティの劣化は、このようなところにも顕著に表れてきているといってよいだろう。

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