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政府の教育再生実行会議で「6・3・3・4制」の見直しがスタート。だが目的は曖昧なまま

 

 政府の教育再生実行会議は、小学校から大学までを「6・3・3・4」の年数で区切る現在の学校制度の見直しに着手した。長年定着してきた、現在の学制が大きく変わる可能性が出てきた。
 ただ学制変更の目的は必ずしも明白ではなく、諸外国が義務教育システムの見直しを行っているからという意味合いが強い。いつものことだが、目的をはっきりしないまま、制度改正の議論を進めてしまうと、改正のための改正という事態にもなりかねない。

 現在の「6・3・3・4」制は戦後間もなく、米国の学制を参考に1947年に制定された。それ以降、基本的な枠組みは変更されることなく現在まで継続してきた。
 だが国際的には、子供の成長が早まっていることや、成人になるまでに身につけなければならないスキルが高度化していることなどから、義務教育の期間を延長したり、中等教育を早めに開始するなどの改革が行われている。
 教育再生実行会議では、こうした状況を受けて、年数の区切りをどのようにするのがふさわしいのか、ゼロベースで見直しを行う。

 ただ日本における公教育の課題は先進各国と必ずしも状況が同じというわけではない。諸外国では、高いレベルの教育を受けることは、基本的人権の一つとして認識されており、機会の平等が厳しく問われている。このため、義務教育の期間が長く、高校までの教育をすべて無償化しているところも多い。中にはドイツやフランスのように大学教育まで無料のところもある。
 しかし、日本では高校無償化は見直しの方向で議論が進んでおり、むしろ世界の潮流とは逆行している。また奨学金制度に対する世間の批判も根強く存在しており、教育が絶対的な権利とはあまりみなされていない。

 このような状況で、諸外国が学制の改革を行っているという理由だけで、制度改正を検討してしまうと、議論が迷走する可能性が高い。実際、教育再生実行会議での議論も、委員によって論点が様々で散漫な印象を受ける。また「6・3・3・4」の区切りを変更すること自体が目的であるかのようなニュアンスになっており、そもそも日本の公教育にはどのような問題があり、改革にはどういった方向性が求められているのかという根本的な視点が欠如している。

 つい数年前までは、日本人の学力低下が問題視された。だが現在では多様な能力を持ったグローバル人材の育成ができないことを問題視する風潮が強い。従来型のカリキュラムにおける学力低下と、多様な能力の育成は全く別の問題であり、対処方法も異なるはずである。しかも教育の効果が出てくるまでには時間がかかるため、改革は長期タームで実施しなければならない。だが、わずか数年の間に、主要な問題意識が簡単にすり替わっていることを考えると、現在掲げられているテーマも果たしてどれだけの賞味期間があるのか怪しい。

 必要なのは、各論を中心とした制度改正ではない。日本の公教育が抱える問題とは何なのか、しっかり定義するという作業こそが、求められている。

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