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「外国人お断り」という赤福前社長の発言は、日本人の優柔不断さの象徴?

 

 伊勢神宮の銘菓「赤福」の前社長による「外国人には来て欲しくない」という発言が波紋を呼んでいる。外国人に対する偏見ではないかとの批判が主なものだが、見方を変えると前社長の発言は、グローバル化をめぐって精神分裂気味となっている現代日本人の心情を如実に反映しているともいえる。

 赤福前社長の浜田益嗣氏は、伊勢神宮の門前にある有名な商店街「おかげ横町」の立役者であり、地元の名士ともいえる人物である。
 その浜田氏が11月26日、津市で開催されたフォーラムの対談で「おかげ横丁には外人は来てほしくない」と発言した。伊勢市では外国人観光客の誘致に取り組んでおり、飲食店や土産物店向けに英会話の研修会を開くなどの対策を実施している最中であった。

 伊勢市に限らず、日本は各地の自治体が外国人観光客の誘致に積極的になっている。日本政府は現在、外国人観光客の受け入れ拡大を目指しており、年間訪日外国人数を1000万人にするという目標を掲げている。その背景には、日本の輸出産業が競争力を失い、貿易赤字の増加が止まらないという現状がある。これまで輸出産業が担ってきた、外貨の獲得や雇用の一部を観光産業に肩代わりしてもらおうというわけである。

 だが日本が受け入れる外国人観光客の数は、諸外国と比較すると異常に少ない。英国は毎年3000万人、米国や中国は6000万人、フランスにいたっては8000万人もの観光客が訪れる。長い歴史と文化を持ち1000万都市を抱える国家で、これほど観光客が少ないのは日本だけである。

 その理由については様々な要因が関係しているが、もっとも大きいのは日本人のメンタリティである可能性が高い。フランスは英語表記が日本並みに不十分であり、中国は日本と同様、欧米からのアクセスがよくないにも関わらず、圧倒的な数の観光客を誘致していることからもそれは明らかである。

 観光客を積極的に受け入れる政策は、外貨の獲得や雇用といった、まさに「お金」の問題から発生しているわけだが、一方で日本人の多くは、本音では外国人に来て欲しくないと思っており、これは紛れもない事実である。
 ここで合理的に判断するなら、「お金」は諦める代わりに外国人は誘致しない、もしくは「お金」が最優先なので外国人は積極的に誘致する、のどちらかの選択となる。
 しかもこれは国全体の話なので、個別には得する人と損する人が出てくる。最終的には全体としてどちらを選択するのかという問題になるはずだ。

 浜田氏の発言は、お金は欲しいが、外国人には来て欲しくないという、日本人の中途半端な心情をよく表している。浜田氏自身は、日本人だけを相手にしていても十分な利益を得られる立場にいるので、他の人に比べてはっきりと言い切ることができているだけである。
 だが結局はマスコミからの質問に対して「外国人への偏見ではない」と弁明をしている。ここで堂々と「外国人は受け入れたくない」という主張を繰り返すことができれば、それはそれで説得力を持つのだが、そう言い切れないところに日本人らしいひ弱さがある。

 日本人はグローバルに活躍できないという指摘がよく聞かれる。その真偽は定かではないが、諸外国に比べて決断の意思に欠け、優柔不断であることは事実だろう。
 もし日本人の総意として外国人を受けれたくないのであれば、それを堂々と主張できる意思の強さと、その弊害(現実には所得の減少という貧しさ)を受け入れる勇気が必要となる。
 だが皮肉なことに、これを決断できる確固たる意思と勇気があるならば、逆にグローバルに活躍することなど簡単であり、外国人観光客によるわずかな外貨収入など大した問題ではなくなるだろう。これはまさに根源的な矛盾といってよい。

 このまま、優柔不断な状態が続けば、外国人増加に伴うトラブルや不満が増える一方、思ったほど外貨や雇用を獲得することが出来ないという状態になるのがオチである。

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