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日本社会の成熟化を夢見たセゾングループの創設者、堤清二氏が死去。

 

 実業家でセゾングループ創業者の堤清二(つつみ・せいじ)氏が11月25日、東京都内で死去した。死因は肝不全。86歳だった。
 堤氏はかなり以前に財界を引退しているので過去の人というイメージが強いが、堤氏が率いたセゾングループは80年代の日本において一世を風靡し、現代カルチャーを象徴する企業といわれた。また異母兄弟で西武鉄道グループ総帥だった堤義明氏と、西武グループの支配権をめぐって壮絶な争いをするなど、話題の多い実業家でもあった。作家として、父親との確執を作品として発表し続けるなど、繊細な一面も持ち合わせていた。

 堤氏の父親で西武グループの創業者であった堤康次郎氏は、清濁併せ呑む大物財界人で、衆議院議長を務めたこともある人物。かなり強引な手法で土地をかき集め、各方面から批判を浴びていた。このため康次郎氏は「ピストル堤」と揶揄されていた(ちなみに、堤氏のライバルで東急グループ創設者である五島慶太氏は「強盗慶太」と呼ばれている)。

 康次郎氏には何人も愛人がおり、清二氏と弟の義明氏は異母兄弟にあたる。東京大学に進学した清二氏は、父親の生き方や、前近代的な日本社会に激しく反発、左翼活動にのめり込んだ。共産党に入党したものの、党内の権力闘争に巻き込まれて除名となり、最終的には父親が経営する西武百貨店に入社した。
 異母兄弟の義明氏との激しい権力闘争の結果、西武グループ本体は弟の義明氏が継ぐことになり、清二氏が率いる流通部門はセゾングループとして西部鉄道グループから分離独立した。

 セゾングループは西武百貨店を中心にパルコ、無印良品などを展開して急拡大し、80年代のバブル消費文化を象徴する企業に成長した。当時は文化活動にも熱心で、糸井重里氏など、セゾングループの支援を受けた文化人が多数出現し「セゾン文化人」などというキーワードが出現したこともある。世界的なソムリエとして有名な田崎真也氏がかつて勤務していたホテル西洋銀座もセゾングループの経営であった。
 存命中の康次郎氏はかねてから百貨店が文化企業のようになることには否定的で、清二氏の猛烈な拡大志向や文化志向は、父親に対する反発も大きいといわれている。

 バブル末期には、国際的なホテルグループであるインターコンチネンタルを買収したが、直後にバブルが崩壊し、セゾングループは苦境に立たされた。1991年に清二氏はグループ代表を辞任し、セゾングループも2000年に解体された。

 堤氏は「辻井喬」のペンネームで作家活動もしており、1994年には「虹の岬」で谷崎潤一郎賞を受賞している。作品の多くは父親との確執をテーマにしており、終生、父親との関係性について思索していたことをうかがわせる。

 セゾングループは良くも悪くも、80年代の日本を代表する企業のひとつであった。結果論としては、内需中心の成熟国家に脱皮しきれない日本の立ち位置を象徴する企業であったともいえる。堤氏の死去によって、セゾングループは完全に過去のものとなったが、果たして日本は堤氏が理想としたポスト消費社会に脱皮できているのだろうか?

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