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握手と蹴り合い。防空識別圏をめぐる単純ではない米中交渉の行方

 

 米国のバイデン副大統領は日本訪問に引き続いて、12月4日から中国を訪問する。中国による防空識別圏設定問題が発生したことから、結果として米国が中国に懸念を表明する場となったが、この訪中はもともと計画されていたものである。
 米国と中国は、アジア太平洋地域での軍事バランスをどのようにするのかついて継続的な交渉を進めており、今回の訪中もその一環と位置付けられる。尖閣諸島問題を含めた東シナ海問題が今後、どう展開するのかは、米中交渉の行方に大きく関係しており、米中間の交渉の行方について、日本国民は関心を寄せておく必要があるだろう。

 中国が防空識別圏を設定した11月23日からわずか4日後、米軍と日本の海上自衛隊は沖縄近海の尖閣諸島付近の海域で合同訓練を実施した。米軍は第七艦隊の主力空母であるジョージワシントン(母港:横須賀)を投入(写真)、日米合わせて75機の航空機と15隻の艦艇が参加した。
 ジョージワシントンは毎年この時期に日本近海で演習を行っているほか、日米合同演習も毎年定期的に実施されている。中国が防空識別圏を設定したことで急遽、この演習が実施されたわけではない。
 ただ沖縄近海において日米の艦艇と航空機の相互運用訓練を実施することは、間違いなく中国に対する牽制球となる。このタイミングで演習を実施できたことは外交的に大きな成果といえるだろう。

 ただ、米国はもう一方で中国との交渉も進めている。日米合同軍事演習に参加したジョージワシントンは、実は、その直前に中国に寄港しており、人民解放軍の高級幹部と意見交換を行ったほか、中国の市民を艦内に案内するなど、異例ともいえる友好ムードの演出を行っていた。
 また米国と中国はすでに、合同の軍事演習を実施しており、来年に実施される最大級の軍事演習「環太平洋合同軍事演習(リムパック)」にも中国は公式に参加する予定である。

 中国よる防空識別圏の設定と日米合同軍事演習は、そのような中での出来事であり、握手をしながら、テーブルの下で足を蹴るとも表現される国際交渉の複雑さを象徴しているといえるだろう。
 バイデン副大統領の訪中も、当然、その延長線上として考えるべきものであり、訪中目的は単純に中国に対する牽制にとどまるものではない。米国と中国の交渉次第によっては、尖閣諸島をめぐる対立において、日本側が不利になる展開も十分に考えられる。

 日米関係が、日本の安全保障の基軸であるという状況に何ら変わりはないが、一方で米中交渉の行方についても、目を光らせておく必要があるだろう。

 交渉は各国が自国の利益のために行うものであり、その決断は往々にして冷酷だ。かつて日本は、米中の接近を想像できず、その事実を知るやパニック的に米国に反発し、戦争を引き起こして敗北するという致命的失態を犯している。さらにその前には、味方と思っていたナチスドイツが突如ソ連と条約を結ぶという事態が理解できず、当時の平沼騏一郎内閣は動揺して総辞職してしまった。こうした歴史的事実を決して忘れてはならないだろう。

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