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飛行計画提出をめぐって日米で温度差。だが問題の本質はそこではないはずだ

 

 中国の防空識別圏設定に対する民間航空会社の対応をめぐって、日米政府の対応が分かれている。日本航空や全日空など日本の航空会社各社は、一旦は中国の指示を受け入れ飛行計画(フライトプラン)を提出してたが、日本政府の要請に応じて提出を取りやめた。
 一方、米国の航空会社は当初、中国からの要請には応じていなかったが、安全性を最優先するようにという米国政府の意向を受けて、現在ではフライトプランの提出を行っている。安全保障と民間事業のあり方をめぐって、日米両国のスタンスの違いが明らかになった形となった。

 中国側は防空識別圏の設定に伴って、民間航空会社に対しても、空域を飛行する場合にはフライトプランを事前に提出するよう求めている。
 日本航空や全日空など日本の航空会社各社は、当初、中国側の要請に応じて、フライトプランの提出に応じていた。だが政府としては、日本の民間航空会社が提出に応じてしまうと、中国による防空識別圏設定という既成事実が積み重なってしまうという懸念がある。
 政府与党内などでこれを問題視する声が上がったことから政府は11月26日、国内航空会社各社に対してフライトプランを提出しないよう「要請」を行い、航空会社側はこれを受け入れ提出を取りやめた。

 政府が、航空会社各社にフライトプランを提出しないよう要請したのは、外務省が11月25日に中国側と水面下で交渉を行い「防空識別圏の設定は民間航空会社の運行を妨げるものではない」との確約を得たことがその背景にあるとの報道がある。
 この報道が事実であれば、中国側との確約をもとに民間航空会社に要請を行ったということになるわけだが、政府が民間航空会社に、どの程度、航空機の安全を保証していたのかは不明である。単なる「要請」ということになると、航空会社側にはいざとなった時には政府は助けてくれないのではないかという疑念が残ることになってしまう。

 一方、米国の航空会社側は、当初、中国の要請にすぐに応じることはなく、しばらくの間、フライトプランは提出していなかった。その後、米国政府の意向を受けてフライトプランの提出を開始している。
 米国務省のサキ報道官は27日の時点において、「乗客の安全性確保がカギになる」と発言したものの、米国政府としての対応については明言を避けていた。ただ、乗客の安全性が重要という報道官の発言から推測すれば、米国政府は当初からフライトプランの提出を前提にしていたフシがある。ちなみに、安倍首相は、「米国政府が、民間航空会社にフライトプランを提出するよう要請したことはないと、外交ルートを通じて確認している」と発言したが、真偽の程は定かではない。

 日米安保が存在するとはいえ、最終的にフライトプラン提出にどう対応するのは、各国政府の決断にかかっている。民間航空会社にしてみれば、政府が最終的に責任を負い、万が一の場合においても自衛隊機が民間機の安全を確保してくれるのであれば、提出の拒否については何の問題もないというのが本音であろう。

 多くのメディアの報道では、日米両国でフライトプランをめぐるスタンスに違いがあることを問題視しており、安倍政権としても、米国と方針が同じであることを強調したい意向のようである。だが問題の本質はそこではない。

 今回の件において米国はあくまで第三者であり、日本は当事者である。日本が本気で尖閣諸島を守りたいのであれば、また既成事実の積み上げを回避するために民間航空会社によるフライトプラン提出を停止させたいのであれば、米国のスタンスがどうであれ、日本の民間航空機の安全を明確に保証する必要があるだろう。これができなければ、軍事力を持つ主権国家としての存在意義などなくなってしまう。

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