ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

防衛相も知らない自衛隊の極秘海外活動があったという報道をどう考えるか?

 

 陸上自衛隊の秘密情報部隊が、首相や防衛相にも知らせず海外で極秘活動を行っていたと共同通信が報じている。同社では、こうした活動はシビリアンコントールに反していると強く批判しているのだが、特定秘密保護法案の審議中というタイミングであるだけに、こうした報道が出てきた背景について様々な憶測が飛び交っている。

 共同通信によると、陸上自衛隊は、独断でロシア、中国、韓国、東欧などに拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせてきたという。この活動は冷戦時代から続けられており、防衛相や首相の指揮や監督を受けていない。
 大臣の指揮下にないこうした活動は許容されておらず、シビリアンコントールに照らして問題であることは間違いない。

 一方、安全保障の分野ではこうした極秘活動はつきものというのもまた事実である。だがこの報道の最大のポイントは、記事の情報源が陸上幕僚長経験者、防衛省情報本部長経験者という点だ。
 陸上幕僚長といえば、防衛省の制服組における最高幹部の一人である。また情報本部は、自衛隊における情報収集活動の拠点であり、防衛相直轄の部署である。つまり、自衛隊の最高幹部や情報に関する最高責任者が、これまで極秘にしてきた活動をマスコミに漏らしたということになる。そしてこの記事は、特定秘密保護法案が国会で紛糾している最中に報道された。

 単純な見方をすれば、自衛隊にはこうした秘密の活動があり、特定秘密保護法案が成立することで、こうした活動がさらに闇に葬られてしまう恐れがあるという流れになる。

 だが一方ではまったく逆の見方も成立する。自衛隊の元最高幹部が、社会正義を前提にしているとはいえ、こうした機密情報をいとも簡単にマスコミに漏らしてしまうという現実である。組織の幹部が現役を引退すると、周囲の人が潮が引くように去ってしまうため、寂しさを感じる人も多い。そのような中、記者にチヤホヤされた快感と、自分自身の信念がうまく組み合わされてしまい、思わず重要情報をしゃべってしまう人は少なからず存在する。
 今回の記事がこのケースに該当するのかは分からないが、特定秘密保護法案は必要であるというロジックに使われる可能性が高い記事であることは間違いない。

 さらに別の見方もできる。自衛隊幹部の証言を元にしたこの記事自体が、何らかの目的を持って作成された可能性である。これは情報源の側に意図がある場合もあるし、記事を執筆する記者側に意図が存在することもある。
 取材に対するリテラシーが低い幹部の場合、記者の誘導尋問的な取材の結果、意図しない記事を書かれてしまうケースがある。また逆に取材する側の知識不足で、情報提供者にうまくコントロールされ、正しくない情報を記事にしてしまう場合もある。

 内容が内容だけに、こうしたリーク報道の情報源と取材経緯は秘匿される。この記事の詳しい背景は最後まで明らかにならないだろう。ただ少なくともはっきりしたことは、日本はいろいろな意味で情報の扱いが幼稚な国であるという点だ。

 今回のようなケースは本来であれば「存在秘」(存在すること自体が秘匿される)に相当するものであり、秘密指定の対象にすらならないものである。だがそういった情報がリークという形であっても、幹部クラスの口から漏洩しているという事実は重い。またこれが意図されたリークであっても、かなり稚拙なものといってよいだろう。
 一方、こうした情報の扱いに対する幼稚さを考えると、特定秘密保護法案の成立後は、際限なく情報が特定秘密の対象とされ、外部からのチェックが極めて難しくなる可能性が高い。

 少なくとも国民の側は、どのような種類の情報であれ、まずは疑ってかかり、その情報を出した組織(人)の目的や背景について、常に考えるというクセをつけていく必要があるだろう。

 - 政治 ,

  関連記事

abejosei
若者と女性の雇用を促進するという官邸主導の会議はまさに茶番劇

 政府は13日、「若者・女性活躍推進フォーラム」の初会合を首相官邸で開催した。出 …

trumpkanzei
トランプ氏が国境税に言及。米国は超大国なので意外と効果を発揮する可能性も

 トランプ次期大統領は2017年1月11日、選挙後初の記者会見を開催した。各国の …

kanntei
政府が解雇要件を緩和する方向で検討を開始。だが公務員だけは例外という大矛盾

 政府はこれまで法律や判例で手厚く保護されてきた労働者の解雇要件を大幅に見直す方 …

jf001
アルジェリアの人質事件で露呈した政府専用機のお粗末。日本は保有する資格なし

 政府は、アルジェリアで起きた人質事件の検証作業を進める中で、政府専用機の運用制 …

ooigenpatu
原子力規制委員会がまとめた原発の新安全基準骨子は、迷走する原発政策の象徴

 原子力規制委員会は1月31日、内部に設置した有識者会合において、原発の安全性に …

no image
経済界の言い分に騙されるな!中国ビジネスは尖閣より前に大失速している

 領有権問題の長期化を懸念する声が経済界を中心に高まっている。 経団連の米倉会長 …

abe20140220
政府内部で法人税減税の議論が始まる。問題の本質は課税ベースの拡大にあり

 政府内部で法人減税に関する具体的検討が始まった。経済財政諮問会議2014年2月 …

meti03
官製ベンチャーキャピタルの産業革新機構は、まるで公共工事のゼネコン

 産業革新機構は2014年1月8日、日米両国のベンチャー企業育成を手がける株式会 …

kitasuibaku
北朝鮮が4度目の核実験を実施と発表。原爆ではなく水爆というのは本当か?

 北朝鮮は2016年1月6日、水爆実験に成功したと発表した。北朝鮮が核実験を行う …

sendaig7
G7を前に日本は八方塞がりの状況。日銀は追加緩和すらままならない?

 G7(主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議)開催を前に、日本が八方塞がりの状況に …