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円安は製造業の収益力に寄与せず、内需企業は公共事業依存体質が鮮明に

 

 財務省は2013年12月2日、7~9月期の法人企業統計を発表した。金融業と保険業を除く全産業の売上げは、前年同期比0.8%増の318兆8438億円となり、このうち製造業は0.3%増、非製造業は1.1%増だった。また、経常利益は24.1%増の12兆9735億円となったが、このうち製造業は46.9%増、非製造業は14.5%増だった。

 全体の数字を見ると、円安によって製造業が回復し、内需拡大によって非製造業も拡大しているように見える。だが、その内容を精査してみると、必ずしもそうとはいえない実態が浮かび上がってくる。

 まず製造業では、大企業と中小企業の落差があまりにも激しい。資本金10億円以上のいわゆる大企業の売上げは前年同期比で1.6%の増加となっているが、資本金1000万円から2000万円の中小企業では逆に売上げが1.8%のマイナスとなっている。
 利益率も同様で、大企業は1.9ポイント増加したのに対して、中小企業は利益がほぼゼロになってしまっており、赤字転落ギリギリの状態になった。

 日本の製造業が苦しいのは円安の影響であると一般に理解されてきたが、法人企業統計の結果はそうはなっていない。ここ1年で円高は大幅に解消されているが、企業の収益力はあまり変化していないのだ。
 大企業の原価率はほぼ横ばいが続いており、前年同期費では若干低下が見られる。だが一方で、中小企業の原価率は逆に上昇している。つまり円安によって製造業が収益力を強化したわけではなく、下請けに対して値引きを要求することで利益率上昇を実現した可能性が高い。下請け企業は、円安で逆に原材料の輸入コストが増加しており、これを価格転嫁できずに利益率が減少している。

 日本の大手企業のほとんどはすでに工場を海外に移転している。国内にしか工場がなければ、円安によって利益率が向上するが、海外調達、海外生産の場合には、円安は利益率には貢献しない。唯一効果があるとすれば、円建ての売上高と利益の額が増加するだけである。
 実際、大手上場企業の中間決算でもその傾向は顕著になっている。円安で見かけ上の売上げと利益は増加しているものの、販売数量は伸び悩んでおり、収益力もほとんど拡大していない。

 だが、大手製造業のこうした行動を批判しても意味がない。企業は現状において最善を尽くすことが使命であり、円安で収益力が向上しない以上、下請けに値引き要求をするのは当たり前だ。問題なのは、円安で製造業が復活するという、安易な前提で日本の産業政策が決定されてきたことである。円安になればすべてが解決するという前提は、そろそろ捨てた方がよいだろう。また従業員への賃上げは、売上げと利益の絶対額ではなく、収益力の向上が伴って初めて実現される。現状では一部の大企業を除いて賃上げに積極的になる企業は少ないだろう。

 また内需関連企業の動向も芳しくない。確かに非製造業の売上げは伸びているが、その分布はかなり偏っている。主要産業のうち、ここ1年で大きく売上げを伸ばしたのは、建設業、不動産業、労働者派遣業であり、どれも公共工事の恩恵を受けるものばかりである。また不動産業は、消費税増税を前にした住宅の駆け込み需要も大きく影響している。
 一方、内需経済の柱であり個人消費との関連性が深い、小売、飲食サービス、宿泊、娯楽サービス、広告、教育、医療などの各分野は軒並み前年比マイナスである。特に非製造業の中でも最大のボリュームである小売りが前年比マイナスである点は痛い。現在の内需経済の回復が、完全に公共事業に依存していることが分かる。

 整理すると、円安は製造業の収益力回復には貢献しておらず、逆に中小企業の経営を圧迫している。一方、規模の拡大が見られる内需については、その多くが公共事業に依存しており、個人消費に関連した産業では、逆にマイナスとなっている。見かけ上はプラスになっているが、内実はこのような状況だ。
 円安誘導と輸出産業への補助、大型の公共工事を中心とした現在の成長戦略は、完全に行き詰まりつつある。現実を見据えた政策変更が求められている。

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