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米国がモノを買わなくなっている。日本人は米国の過剰消費を批判している場合ではない

 

 米国が世界の買い手としての立場を降りようとしている。新興国経済の鈍化が目立つ中、日本をはじめとする工業国は、米国の購買力増加に期待している。だが、米国は自国生産を年々拡大しており、以前のような買い方をしなくなってきている。米国の変化は、今後の世界経済の動向に大きな影響を与える可能性がある。

 これまでの世界経済は、米国の異常ともいえる消費によって支えられてきた。米国は世界から多くの物品を輸入するため、膨大な経常赤字を垂れ流し続けてきた。だがこの米国の過大な消費が中国や日本の経済を支えてきたといってよい。
 日本経済は中国への依存度が高まっているように見えるが、現実は異なっている。中国に輸出された製品は現地で組み立てられ、最終的には米国に送られることが多い。日本経済は基本的に米国の輸入に依存しているのだ。
 日本では、米国人の過剰消費体質について批判する風潮がある。だが米国人の過剰ともいえる消費の恩恵をもっとも受けてきたのは、ほかならぬ日本人である。だがここにきて、米国の旺盛な購買力に変化が出てきた。

 米国の4~6月期における経常赤字は989億ドルとなり、1000億ドルを下回った。1000億ドルを下回るのは2009年の第3四半期以来であり、ここ1年は毎四半期ごとに経常収支が改善していた。経常収支が改善した最大の理由は、輸入が減少したことである。

 米国の輸入額は、2012年第1四半期の8300億ドル以来、減少に転じている。輸入が減少した主な原因は、米国の製造業が国内生産に回帰しており、金属や加工部品といった原材料や、家電などの耐久財輸入が減っているためである。また石油の輸入も大幅に減少している。
 この背景には、当然のことだがシェールガス革命がある。米国では安価なシェールガスが次々に開発されており、近い将来、米国はエネルギーを完全に自給できるようになる。豊富で安価なエネルギー源を求めて、製造業が米国に回帰しており、これに伴って輸入が減少しているのだ。今後シェールガスの生産はさらに拡大されるため、米国の輸入はさらに減少する可能性がある。

 この影響をもっとも受けるのは日本や中国である。米国の過剰ともいえる輸入に依存し、米国市場に多くのモノを販売することで経済を成り立たせてきたからだ。
 日本では製造業の復活が国是とされ、アベノミクスでは製造業の輸出を回復させるための支援が製造業に対して行われている。だが日本の最も大事な顧客である米国が、世界からモノを買わなくなりつつある。日本の産業政策の前提条件が根本から崩れてしまう可能性がある。
 中国やアジアの購買力に期待する向きもあるが、あまり現実的ではない。冒頭で述べたように、アジア向けの輸出の多くは、最終的に米国向けに再輸出されているからだ。

 日本の製造業で競争力のあるところは、この現実を見据え、次々に米国に進出している。化学メーカー各社は米国での工場建設を相次いで発表し、エンジニアリング各社は、米国からの受注獲得を最重要課題と位置付けている。

 米国は世界で唯一、堅調な経済の回復を見せているが、それが日本や中国の輸出拡大につながらない可能性が高まっている。日本の製造業はこれまでコスト要求が厳しいところはアジアに工場移転するという流れだったが、付加価値の高い業種については、これからは米国に進出するという流れになるだろう。
 これは世界経済の大きな動きであり、日本一国の力でコントールできるものではない。日本の製造業は基本的に海外で活動することを前提にしないと、さらに衰退の一途を辿る可能性が高い。日本人は米国の過剰消費を批判している場合ではないのだ。

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