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超優良企業セブンによるニッセン買収で見えてくる、同社と日本経済の限界点

 

 セブン&アイ・ホールディングスは2013年12月2日、カタログ通販大手のニッセンホールディングスを買収すると発表した。子会社のセブン&アイ・ネットメディアを通じ、TOB(株式公開買付)を実施する。
 ニッセンの買収によってネット販売を強化するという同社の選択は、個別企業の戦略としては正しいものといえる。だが、大手スーパーがこれまで歩んできた歴史的経緯を考えると、今回の買収は、超優良企業となった同社の経営戦略が限界に達しつつあることを象徴する出来事といえる。またこれは、規模の拡大が見込めなくなった日本経済の姿そのものといってもよい。

 セブンは日本を代表する優良企業の一つである。ただ小売店の規模としては競合であるイオンの方が大きく、グループ全体の売上げはイオンが約5兆7000億円、セブンが約5兆円となっている。
 一方、セブンの経常利益率は5.9%、イオンは3.7%なので、セブンはイオンに比べて利益率が高く、これが優良企業といわれる所以である。

 ちなみに、セブンの利益のほとんどはコンビニ事業から生み出されているのだが、このコンビニ依存体質が、同社の高収益の源泉であるとともに、同社の限界でもある。特に日本のスーパーが辿ってきた道のりを考えるとそれは尚更である。

 1970年代、日本のスーパー各社は、米国型の巨大スーパーを目指して店舗の拡大を急ピッチで進めていた。当時、こうした各社の取り組みは「流通革命」と呼ばれており、大量販売で価格を安くし、庶民の生活を向上させると期待されていた。
 だがこの戦略に待ったをかけたのが国の規制である。スーパーの進出に脅威を感じた小規模小売店の政治活動によって、大規模小売店舗法(いわゆる大店法)が成立、日本では米国型の大型店舗を作ることができなくなった。
 ここでスーパー各社の戦略が分かれることになる。当初の方向性を変えず大型店舗にこだわったのがイオンであり、ダイエーであった。一方、不本意ながら国の方向性に従い、コンビニに路線転換したのがセブンである。

 結果は明白で、ダイエーは倒産し、イオンは生き残ったものの低収益となり、セブンはもっとも高収益な会社となった。だがコンビニが日本に与えた影響には賛否両論がある。便利にどこでも買い物ができるが、値引きをせず定価販売を貫いたため(そうしないと小規模店舗では利益が出ない)、日本の消費者は諸外国に比べて高い買い物を強いられることになった。良くも悪くも、コンビニは規制によって生まれたビジネスであり、規制大国日本の象徴なのである。

 セブンはコンビニによって高収益を維持してきたが、ここに来て通販会社の買収に乗り出した。ニッセンは通販業界では最大手の1社とはいえ、売上げはわずか1800億円、時価総額は200億円しかなく、セブン全体の規模からするとあまりにも小さい。しかも日本のネット通販市場は、すでに飽和状態といわれており、今後爆発的な規模の拡大は見込めない。
 セブンは、既存のコンビニやスーパーによる売上げ拡大が困難であることや、ネット通販市場が飽和状態であることもよく認識しているはずである。それでもなお、ニッセンの買収に動いたのは、ネット通販はごくわずかだが市場の拡大が期待できるからにほかならない。これは規模の拡大が見込めない中、わずかなパイの奪い合いをしている日本経済の姿そのものである。

 ちなみに、セブンやイオンとほぼ同時期に米国で流通革命を起こし、それに成功した米小売大手ウォルマートの売上高は、なんと48兆円であり、セブンの10倍近くもある。
 セブンが日本を代表する優良企業であるならば、国内企業の買収によってパイの奪い合いをするのではなく、海外の大手スーパーやネット通販企業の買収に進出して欲しかったと考える投資家も少なくないはずだ。海外企業の買収はリスクも大きいが、買収企業からの配当などによって、日本の経常収支にも大きく貢献することができる。

 だがソフバンクが行っているようなこうしたリスクを取る経営手法は同社にはなじまない可能性が高い。それはセブンが優良な「日本企業」であるからにほかならない。これが日本式経営の美点でもあり、これ以上、日本が豊かになることが出来ないという悲しい限界点でもある。

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