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10月の国際収支で見えてきた慢性的な経常赤字への道。日本はどうすべき?

 

 財務省は2013年12月9日、10月の国際収支を発表した。最終的な国の利益を示す経常収支は1279億円の赤字に転落した。経常収支が赤字になるのは9カ月ぶり。貿易収支は1兆919億円の赤字で、10月としては過去最大だったことが大きく影響した。
 国際収支は季節による変動が大きく、季節調整済みの数字も併せて検証する必要がある。季節調整済みの数字ではすでに経常赤字が2カ月連続となっている。来月以降もこの状況が続くかどうかは分からないが、日本はそろそろ慢性的な経常赤字体質になりつつあることを認識すべき時期に差し掛かっている。

kokusaishushi201310 国際収支は主に貿易収支と投資収益(所得収支)で構成されている。両者を足したものが、国の最終的な利益を示す経常収支となる。
 日本はすでに慢性的な貿易赤字体質となっているが、経常収支は黒字が続いてきた。海外に投資した資金の利子や配当収入が貿易赤字を上回っていたからである。
 だがこれ以上貿易赤字が拡大するようになると、投資収益だけではカバーしきれなくなり、最終的な収支である経常収支も赤字に転落する。今月の統計結果は、そろそろ経常赤字転落の兆候が出始めていることを示している。

 経常赤字になることは必ずしも悪いことではない。国際収支における赤字・黒字は単にマネーの出入りを示しているだけであり、利益という点では中立である。また日本は成熟国家の段階に入っており、長期的に見て経常収支の赤字転落は必至といってよい。だが現実問題として、日本が経常赤字に転落することのデメリットは大きい。
  これまで日本は数十年にわたって経常黒字を続けてきており、経済や社会の基本構造もそれを前提に組み立てられている。急激な国際収支の変化は大きな混乱を 招く。また政府の財政赤字が巨額であることや、高齢化の進展で貯蓄率の低下が必至となっている現状を考えると、経常赤字への転落は金利や為替など金融市場にも大きな影響を与えることになる。少なくとも国際収支の変化はなるだけ緩やかな方がよいだろう。

 経常赤字への転落をなるだけ緩やかなものにするためには、まず貿易赤字の増大に歯止めをかける必要がある。貿易赤字の元凶となっているのは、輸出の不振と輸入の増大である。だが両者については、あまり根本的な対策がないというのが現実だ。
 輸出の不振は円高といわれているが、必ずしもそうとはいえない。昨年末以降、円高は是正され、輸出金額は増加したが、輸出数量は伸びていない。企業のグローバル展開が進み、工場の海外移転によって輸出そのものが減っている可能性がある。
 また輸入の増大も外部環境による影響が大きく、国内での対策には限界がある。というのも、輸入増大は一般的に原発の停止によるエネルギー輸入が原因といわれているが、実際にはそうではないからだ。あまり知られていないが、日本全体のエネルギー輸入量は震災前と震災後でほとんど変化していない。エネルギーの輸入金額が1.5倍にも膨れあがったのは、LNG価格が2倍に、原油価格が1.5倍に上昇したからである。国内の消費電力は節電によって震災以降、8%以上も減少している。原発停止に対してエネルギー輸入量を増やして対応したのではなく、どちらかというと節電で対応したのである。

 以上から、日本が独自に対策を打つことができるとすると、それは投資収益(所得収支)の拡大である。現在、外貨資産の多くが米国債で運用されている。直接投資の割合を増やすことができれば、所得収支は大幅に拡大する。そのためにはソフトバンクが行ったような積極的な海外のM&Aを進めていく必要がある。リスクを取る経営手法は、日本企業にとって難しいかもしれない。だが、海外M&Aの拡大は、外部環境に左右されず、経常収支を改善させるもっとも確実な方法なのである。

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