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マンデラ氏の追悼式で、現職のズマ大統領が猛烈なブーイングを浴びたワケ

 

 南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領の追悼式が2013年12月10日、南アフリカ最大の都市であるヨハネスブルクで開催された。式典には米国のオバマ大統領、フランスのオランド大統領など、約100カ国の首脳が参列した。日本からは皇太子さまと福田康夫元首相が参列している。

mandela

 会場は雨となったが、アフリカでは雨は祝福と理解されており、式典に集まった数万人の国民は、皆笑顔で踊り続け、悲嘆にくれるムードはまったくなかった。ただ式典の中では、アパルトヘイト廃止後も多くの問題を抱える現在の南アフリカの状況が垣間見える出来事もあった。

 各国からの参列者を代表して米国のオバマ大統領が弔辞を述べたが、オバマ大統領には群衆から最大級の喝采が寄せられた。南アフリカでは、米国初の黒人大統領ということで、オバマ大統領の人気が高い。またオバマ大統領自身も個人的にマンデラ氏を尊敬していることが知られている。

 一方、南アフリカの現職大統領であるズマ氏の弔辞になると、群衆から猛烈なブーイングが発生した。南アフリカはアパルトヘイトを廃止したものの、黒人と白人の経済的格差はあまり縮小しておらず、現在でも黒人の平均所得は白人の8分の1しかない。また黒人の中でも、優遇政策をうまく利用して経済的に成功した人と、貧困から抜け出せない人との格差が拡大している。ズマ大統領へのブーイングはこうした現状を反映したものと受け止められている。

 南アフリカでは、政治的には黒人が優勢となっているが、経済・金融の分野では依然として白人が覇権を握っている。このような中、黒人としてビジネスを成功させるには、マンデラ氏一族を中心とした権力者とそれに近い人たちが独占する政治利権に頼るしかないという現実がある。このため中国でよく見られるような、いわゆるクローニー資本主義(地縁血縁、学閥、政治閥など、近親者を中心に経済が回る構造のこと)になりがちである。

 またアフリカでは、一夫多妻制の文化が残っており、有力者は多くの子供を持つことが多い。マンデラ氏もその例外ではなく、結婚は三度しており、20人以上の子供がいる。マンデラ氏一族が、同氏の莫大な遺産をめぐって、血みどろの争い繰り広げていることは公然の秘密となっており、葬儀が一段落した後は、遺産をめぐる争いが本格化するとみられている。

 少々意地悪な言い方をすれば、アパルトヘイト廃止後も、大方の黒人の生活環境は改善しておらず、利権を得ることができた一部の黒人を除いては、多くが不満を持っている。だがマンデラ氏を批判してしまうと、現在の状況を全否定することになってしまう。そのアンビバレントな感情が、ズマ大統領にぶつけられているという状況だ。

 南アフリカの状況を見ると、社会が開かれたものに進化するためには2つのカベを超えなければならないことが分かる。最初のカベは人権が抑圧された野蛮な状況からの脱却なのだが、仮にそれを乗り越えることがでたとしも、ムラ社会的な制度という次の大きなカベを乗り越えなければならない。そしてこのカベが実はもっとも堅固な構造となっている。

 日本は戦後体制によって、ムラ社会的な制度からの脱却を図ったことになっている。だが依然として共同体的、地縁血縁的な社会慣行が多く残っており、これが多くの制度改革を阻んでいる。貧富の差が激しい南アフリカと現在の日本を同列に論じることはできないが、同国が抱えている問題は、今後の日本社会のあり方を考える上で、有益な示唆を与えてくれる。

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