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公務員宿舎の賃料アップは当初予定の2倍から1.5倍に後退。その理由は?

 

 財務省は、民間より割安だと批判されている国家公務員宿舎の家賃について、全体の値上げ幅を平均1.5倍程度にすると発表した。
 2011年12月に公表された「国家公務員宿舎の削減計画」における宿舎使用料の見直しでは現行の2倍弱としていただけに、改革が後退しているとの批判が出る可能性もある。

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 現在政府は、全国に約1万カ所、21.8万戸の国家公務員宿舎を保有している。削減計画では、このうち必要性の高くない5.6万戸(全体の25.7%)について5年をメドに削減することが盛り込まれた。また宿舎の利用料については、宿舎の建設、維持管理等に必要となる金額と同水準まで引上げを行うとした。

 削減計画に沿って見直しを行った結果、全国で約5000カ所の住宅の廃止することとし、5.6万戸を削減するメドが立った。一方、賃料については平均で1.5倍にとどまることになり、当初の計画を下回る。地方における賃料の引き上げを1.3倍以内にしたことや、災害発生時の即応体制を強化したことなどがその主な理由となっている。

 公務員の住宅については、豪華な住宅に民間よりもはるかに安い価格で入居できていることなど、公務員の待遇面での問題と、政府が国有財産を手放さず確保しているという財政上の問題の二つがある。両者の問題はまったく別の政策課題であり、峻別して考える必要がある。

 今回の見直しで、家族を持つ幹部級の公務員が住む宿舎の賃料は1.8倍程度に値上がりとなる。ただ幹部の住宅は一等地にあることも多く、民間人が借りればかなりの高額になる物件も多い。また若手でもキャリア公務員向けの宿舎は条件が良いところが多い。東京都23区内にある家族用物件の家賃が、見直し後でも11万6000円ということになると、公務員の特権であるとの批判が出る可能性は十分にある。

 これとは逆に、地方にある公務員宿舎の賃料引き上げを抑制したのは、公務員の特権維持というよりも、財政上の問題が大きい。金額はあまり多くないが、国家公務員にも家賃補助はあり、民間住宅を借りることもできる。地方には空き家が多く家賃が格安であることから、宿舎の賃料を引き上げると、民間住宅に流れて宿舎が空いてしまう。公務員が住まない宿舎の存在は、国有財産の売却圧力につながることから、政府としてはなるだけこの状態を避けたいと考えているのだ。
 背景には、公務員宿舎の維持管理に関する政治利権がある。現在、公務員宿舎の維持管理には年間500億円程度支出されており、関連業者にとっては大きな市場である。なるだけこの利権を手放したくないというのが政府のホンネである。

 一方、自衛隊員や現業系の職員を中心に、民間よりも条件の悪い宿舎に住む公務員も少なくない。本省に勤務するホワイトカラーの公務員でも、ノンキャリアの若手などでは、風呂・トイレ・キッチン共同のシェアハウスのような宿舎に住む人もいる。平均値での議論が難しいのも事実だ。

 公務員宿舎の制度は、戦後の住宅事情が厳しい時代に出来たものである。現在、日本は人口の減少が急速に進んでおり、近い将来、住宅の空室率が4割に達するとの見方もある。住宅ストックは完全に供給過剰となっており、公務員用に大量の宿舎を確保しておく必要性は薄れてきている。基本的には公務員宿舎の保有はさらに削減する方向性が望ましく、その中で適正な家賃も決まってくるはずである。

 - 政治, 社会

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