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軽のスズキがババを引いた税制改正大綱。自動車業界もゼロサムゲームに突入

 

 自民・公明両党が発表した2014年度の税制改正大綱では、自動車税の扱いが一つの焦点になった。自動車取得税を減税する代わりに、軽自動車税の増税が決まり、軽自動車メーカーだけが損をする形で最終決着した。これまで一枚岩として日本政治に絶大な影響を及ぼしてきた自動車業界の分裂は、パイの拡大が見込めなくなり、ゼロサムゲームと化した日本経済の現状を象徴している。

suzuki

 自動車取得税の廃止は、消費税増税対策として2013年1月に発表された経済対策にすでに盛り込まれていたものである。
 リーマンショック後の販売不振に苦しむ自動車業界は、その絶大な政治力を活用してロビー活動を展開。エコカー減税など政府から巨額の助成を引き出すことに成功してきた。自動車取得税の廃止もその延長線上にある。

 ただ自動車取得税は地方税であることから、これを廃止することは2000億円の税収減少につながり、地方自治体の財政を直撃してしまう。総務省が自動車取得税の廃止に難色を示したことから、その代替案として急浮上してきたのが軽自動車税の増税である。
 軽自動車を主力商品とするスズキの鈴木会長は、軽自動車への増税は「弱い者いじめ」であるとして強く反発した。地方の零細自営業者などを中心にコストの安い軽自動車へのニーズは強く、鈴木会長の発言は大きな動きになるかと思われた。だが世論はあまり反応せず、あっさりと軽自動車への増税が決まってしまった。

 この背景には、自動車業界内部の分裂がある。軽自動車を中心に製品を展開しているのは主にスズキとダイハツだが、ダイハツはトヨタの子会社であり、独自の動きをしにくい環境にある。軽自動車への増税に激しく反対するのはスズキだけになってしまい、他の大手各社は自動車取得税減税という借りを政府に返す方を優先してしまったわけである。

 ここ1年の円安の進展でトヨタなど自動車メーカーの多くは増収増益となった。だが肝心の販売台数は横ばいが続いており、業界として成長しているとは言い難い。日本の製造業のお手本とされ、ひたすらパイの拡大を目指して来た自動車業界だが、とうとうライバルから顧客を奪い合うゼロサムゲームに突入したのである。

 この動きはすでに日本国内のあらゆる業界で見ることができる。ごくわずかな市場規模に過ぎないTV通販市場に大手企業が何十社も殺到するなど、わずかな顧客をめぐって醜い争いが展開されている。ソフトバンクのように巨大な米国市場にM&Aを仕掛けるような会社は話は別だが、国内市場しか主戦場にしない企業にとっては、限られた顧客を奪い合う以外に生き残る方法はない。
 グローバルに展開できている自動車メーカーですらこの状況であることを考えると、今後こうしたゼロサムゲームは、日本国内でさらに激しくなってくるだろう。

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