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米国だけでなく欧州でも生産拠点国内回帰の動き。だが両地域の環境は正反対

 

 米国や欧州で、中国や東欧など新興国に建設した工場を撤収し、国内生産に回帰する動きが加速している。好調な経済とシェールガス革命を背景に、米国への製造業回帰はかなり前から進んでいたが、同様の動きが欧州でも目立つようになってきた。

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 ブリジストンは2013年10月、当初閉鎖の予定であったイタリアのタイヤ工場の存続を決定した。
 アジアに建設した製造ラインを一部閉鎖しイタリア工場に戻す。自動車バッテリー大手のフィアム社も、東欧の工場からイタリアに生産拠点の一部を回帰させている。
 欧州のある学術調査では、2012年の段階で欧州に製造拠点が回帰したケースは、イタリアで72件、ドイツで42件、フランスで32件あったという。欧州での動きはまだ一部にとどまっているが、これまで東欧や中国などに工場が移転する一方だったことを考えると、注目すべき動きといえる。

 生産拠点を戻す動きの背景には、中国など新興国における人件費の高騰があるが、それ以外の事情については、米国と欧州で大きく異なっている。
 米国への生産回帰は、好調な米国経済に加え、シェールガス革命によってエネルギーコストが大幅に下がっていることが主な要因となっている。経済が堅調で最終消費地に近く、エネルギーコストが安いとなれば、工場を建設する企業が増えるのは当たり前である。また米国の最低賃金は日本と同様、先進国の中ではかなり安く、人件費がそれほど高くないことも大きく影響している。つまり米国への製造業回帰は、市場メカニズムで自然発生的に起こっている現象ということになる。

 一方、欧州の場合には事情が大きく異なっている。欧州は景気低迷が続き、10%台という高い失業率が続いている。スペインなど債務危機に陥った国では20%台というところもある。このため失業対策は各国政府の最優先課題となっており、メーカー各社には政府から雇用を増やすよう数多くの要望が寄せられることになる。
 ブリジストンのケースでは、労使双方が交渉し、賃上げの抑制や労働時間の削減などを労組が受け入れ、雇用を最優先したことで生産回帰の合意が成立している。

 欧州は労働者保護が徹底しており、日本と比べると最低賃金がかなり高い。フランスの最低賃金は9.43ユーロ(約1335円)、英国は6.31ポンド(約1056円)、社民党との大連立政権の成立で最低賃金導入が決まったドイツでは、今のところ8.5ユーロ(1204円)で検討が進められている(日本は平均764円。米国は州によって異なるが平均すると820円前後)。
 ドイツを除けば、こうした手厚い労働者保護政策が、失業率を高めているというのは事実であり、国内生産回帰は、雇用をめぐる政府、労働者、企業の妥協の結果でもある。

 日本では今のところ製造業を国内に戻す動きはあまり活発になっていない。政府はむしろ賃金を上げるよう企業に要請しており、国内の生産コストは今後、さらに上昇していく可能性が高い。日本ではこの10年、一貫して製造業からサービス業に労働者が移転してきたが、この動きは今後も続きそうだ。

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