いくら緩和しても経済成長なんてムリ!日銀のホンネが聞こえてくる
2014年度の消費者物価指数(CPI)上昇率見通しが日銀の目標値である1%に届かないことが明らかとなった。日銀は事実上、インフレ率1%を目標値として掲げており、これが達成できるまで金融緩和を継続することになる。
世界各国で緩和競争が行われる中、政治的圧力によって日銀は緩和拡大をイヤイヤ進めている。だが基本的に日銀は金融緩和を拡大したくない。
その理由はいろいろあり、中には組織の利益を優先する役人根性丸出しのものもあるが、もっとも大きいのは、日銀自身が緩和策が効くと思っていないことである。
金融政策における重要な判断基準となる物価上昇率は、GDP(国内総生産)の伸びと密接に関係している。今回2014年度の物価目標が達成できないとした根拠は、2013年度のGDPが大幅原則する可能性が高くなっているからだ。
政府や日銀は、日本の潜在的な経済成長率を0.5%程度であることを前提に政策を組み立てている。潜在成長率とはその国が達成できる経済成長の理論的な能力のことを指す。経済学の専門家がいろいろなモデルを使って計算しているという。
なにやら立派そうな雰囲気のするコトバだが、潜在成長率を推定する方法は実は案外いい加減だ。乱暴にいってしまうと、経済成長率を決める要素は、人口、資本の2つしかない。この2つで決まる成長率以上に成長を実現した場合には、あとづけで技術革新が要因であったと判断される。
現在の日本では、人口は年々減少し、資本(設備投資)も毎年大幅なマイナスである。しかも技術革新にも疑問符が付きつつある。日本は経済成長のしようがないのである。
専門家がいろいろと理論をこねくり回しているのは、普通に計算するとマイナス成長にしかならないので、どうやってとにかくプラス成長の数字を出せるのか数字いじりをしているだけなのだ。理由は簡単、「マイナス成長しか出来ません」ではカッコがつかないからである。
日本経済を再び成長軌道に乗せるには、経済や産業の構造をゼロベースで見直し、再構築して資本の投下を促進するしかない(いわゆる構造改革)。だが構造改革には既得権益者(高齢者、公務員、保護産業の社員、農業従事者、土建業など)の痛みを伴うため、政治家はビビッて実行できない。
実は日銀は、日頃からこのことを主張している(批判されることを恐れているのか、目立たないようコソッと主張している)。現在の状況でいくら金融緩和を行っても経済が回復しないことを一番よく知っているのは日銀自身なのだ。
日銀による緩和で溢れたマネーは、すべて国債の消化に回り、日本の財政をさらに悪化させるだけであろう。もっとも、金融緩和が円安とインフレをもたらし、製造業の収益が一時的に回復すれば、経済が持ち直す可能性は残っている。
だがそれは根本的な解決策になっておらず、近い将来大きな副作用を国民にもたらすことになる。だがその時には、現在の政策責任者は、誰もその席にはいないであろう。
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