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家計の貯蓄が減っているのに、国債の消化がこれまで問題なく行われてきたワケ

 

 日銀は2013年12月19日、7~9月期の資金循環統計を発表した。9月末時点で家計が保有する金融資産の残高は前年比5.9%増の1598兆円となった。株式など証券が35%近く増加する一方、現金の増加は2%にとどまっている。株高によって資産価格が上昇したことが金融資産拡大につながった。

ichimanen 一方、事業会社の金融資産は大幅に増え、前年比9.1%増となった。家計と同様、株式の増加率が高いが現金も約6%増加した。
 日本は賃金の低下によって家計部門における貯蓄率の低下が続いている。株高によって見かけ上の個人金融資産は増えたが、全体としては、家計のお金が少なくなり、企業の内部に滞留しているという状況が見て取れる。

 資金循環統計は、マクロ的に見た大きなお金の流れを把握する目的で調査が行われている。バブル崩壊後の日本経済は、景気が低迷し、貯蓄率が低下する一方、企業は内部留保を増やしてきた。政府部門は国債を大量に発行し、調達した資金を政府支出として企業に分配している。つまり、政府が国民から借金をし、企業の業績を支えると同時に、企業は利益を国債の購入に回し、逆に政府の借金を支えるという構図になっている。

 日本政府や地方自治体の抱える借金はすでに1000兆円を超えている。社会保障費の増大によって今後も財政支出は増えることが予想されており、国債の消化余力がどの程度残っているのかが、重要なカギとなりつつある。

 日本の家計貯蓄率は1980年代には15%という高い水準にあり、日本人は貯蓄好きといわれてきた。当時は貯蓄率が低く、消費が過剰な米国を見下すような風潮さえあった。だがバブル崩壊後、日本は貧困化の一途を辿り、現在の貯蓄率は1%以下と、ほぼゼロに近い状態となっている。
 貯蓄率の劇的な低下は、国債の消化余力の減少につながってくる。だが日本は貯蓄率が低下しているにもかかわらず、国債の消化は今のところなんとか維持できている。それは家計の貯蓄が減少した分、企業の貯蓄が増加しており、貯蓄全体としては大きなマイナスになっていないからである。

 だが問題はこの先である。企業はその性質上、過剰に資金を余らせておくことができない。企業の余剰資金増加のペースは鈍化しており、そろそろ頭打ちになる可能性が高い。
 設備投資であれ、賃金であれ、企業が溜め込んだ資金を外部に放出した場合、これがプラスに作用すれば、最終的には家計の余剰資金増加につながり、再び家計部門による国債消化能力が高まることになる。だが企業からの資金放出が経済成長につながらず、輸入の増加による海外への流出になってしまった場合には、逆に国債の消化余力に疑問符が付くことになる。

 今回の資金循環統計は、バブル崩壊以後の家計から企業へというお金の流れが、最終段階に入りつつあることを示している。好循環と悪循環のどちらになるのかは分からないが、潮目の変化が近づきつつあるのは、間違いないようだ。

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