ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

厚労省のブラック企業調査。労働行政のパンドラの箱を開けてしまったとの声も

 

 厚生労働省は2013年12月17日、若者の使い捨てなどが疑われる、いわゆる「ブラック企業」に関する調査結果を公表した。対象となった5111事業所のうち、82%に当たる4189の事業所で何らかの労働基準法違反が見つかった。同省は違反があった事業所に是正勧告を行った上で、改善が見られない企業については公表のうえ、書類送検する方針。

 businessman07 同省がいわゆるブラック企業に関する調査を行うのは初めて。若者を使い捨てにするブラック企業の存在が社会問題化していることを受けての措置だが、調査結果は予想通り、多くの事業所で法令違反が見つかった。
 違法な時間外労働は43.8%の事業所で、賃金不払による残業は23.9%の事業所で見つかった。また21.9%の事業所で過重労働による健康障害防止措置が不十分であった。

 同省では悪質な企業に対しては、企業名の公表や送検も検討していることから、こうした違法な企業は今後減ってくる可能性が高い。
 だがそれとは別に、調査の実施に関して、これまで法律が厳格には適用されてこなかった日本の労働行政におけるパンドラの箱を開けてしまうのではないかと危惧する声も上がっている。

 日本では欧州とほぼ同レベルの立派な労働法制が整備されている。だが実際には労働基準法はほとんど守られておらず、厚労省側もその実態はよく承知している。日本の労働行政における「ウラ」のルールは「大企業の雇用を維持するためには、多少の法律違反には目をつぶる」というものであり、実際、多くの法令違反が黙認されてきた。

 日本は解雇しにくい国といわれているが、それは大企業に限った話である。大企業の下請けが主な収益減である中小企業では、解雇要件を満たさない解雇は日常的に行われている。また最低賃金がまったく守られていない業界も多く、賃金から過剰に必要経費を差し引くという行為もごく当たり前に行われている。大企業においても、労使協定を結ぶという形で労働時間の制限は実質的に存在していない。

 それも皆、大企業の雇用を最優先するという、隠れた目的のためにほかならない。逆に言うと、労働法制を厳格に適用していては大企業における終身雇用を維持することができなくなってしまうのだ。労働法制の遵守が厳しく求められる欧州では、軒並み10%台の失業率になっているのはそのためである。

 今後、ブラック企業に対する措置が厳しくなれば、当然、労働法制の厳格な適用があらゆる企業に求められる可能性が高くなってくる。法の支配を原則とするならば、全員を雇用するだけの需要が経済に存在しないからといって、法規を無視してよいということにはならない。
 日本も労働者の権利は強固に守られるが、よほどの人材でない限りは、なかなか仕事そのものにありつけず、失業者が増加するという、欧州のような社会情勢になっていくのかもしれない。

 - 社会, 経済 , , ,

  関連記事

murakmiharuki
村上春樹氏が再びノーベル文学賞を逃す。本当に受賞することは可能なのか?

 スウェーデン・アカデミーは10月10日、2013年のノーベル文学賞を発表した。 …

bigben
ロシアと敵対しても金融街へのアクセスを禁止しようとしない英国の高度な戦略

 ウクライナの内政にロシア軍が介入している問題について、米国やEUは部分的な制裁 …

no image
受給ギャップ拡大などインチキ。そもそも想定された需要など、もはや存在していない

 内閣府は15日、7~9月期の需給ギャップが4~6月期に比べて5兆円拡大して15 …

ouyou
総勢180名の財界訪中団が汪洋副首相と会談。だがトップ2との会談は実現せず

 安倍政権発足後、最大規模となる財界訪中団は11月19日、北京市内において汪洋副 …

setubitousi
企業の業績拡大が中小企業にも波及。ただ設備投資は公共事業の依存度が高い

 財務省は2014年6月2日、2014年1~3月期の法人企業統計を発表した。売上 …

pakukune02
産経ソウル支局長は起訴の可能性高まる。これはまさに民主主義の問題

 韓国の朴槿恵大統領が元側近の男性と会っていたという記事を書いた産経新聞ソウル支 …

nichigin02
マネーストックの伸びは順調。だが絶対値では量的緩和以降、横ばいの傾向

 日銀は10月11日、9月のマネーストック(マネーサプライ)速報を発表した。代表 …

kabuka
5兆円の損失を公表したGPIFがスマートベータ型運用にシフト。果たして儲かるのか?

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が保有する銘柄の公 …

pakucongress
産経ソウル前支局長無罪判決が、極めて妥当かつ民主的である理由

 韓国のソウル中央地方裁判所は2015年12月17日、朴槿恵大統領の名誉を傷つけ …

seveneleven
超優良企業セブンによるニッセン買収で見えてくる、同社と日本経済の限界点

 セブン&アイ・ホールディングスは2013年12月2日、カタログ通販大手のニッセ …