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普天間基地の移設問題は、日米関係ではなく、むしろ日中関係に大きな影響を与える

 

 沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)知事は2013年12月27日、米軍普天間基地の移設先となる同県名護市辺野古の埋め立て申請を承認した。日米同盟の最大の懸念事項であった普天間基地問題がとうとう動き出すことになる。

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 仲井真氏は決定に先立ち、12月25日に安倍首相と首相官邸で会談を行った。
 安倍氏からは、沖縄県が求めている「5年以内の運用停止、早期返還」を具体化するために、防衛省に作業チームを設ける方針であることや、日米地位協定を補足する新たな政府間協定の締結交渉を米側と開始したことなどが伝えられた。
 また前日の24日には、今後8年間で総額2兆4000円を超える前代未聞の沖縄振興予算を組むことが決定している。仲井真氏は「驚くべき立派な内容だ」と評価し、今回の埋め立て承認につながった。

 ただ今回の安倍氏との会談は、埋め立て容認を前にしたセレモニーという意味合いが強く、仲井真氏の辺野古移設容認はかなり前から準備が進められていた。11月には沖縄県を地盤とする自民党の国会議員5人が辺野古への移設を容認する姿勢を明らかにしていたほか、沖縄へのカジノ誘致の話題も取り沙汰されている。

 これまで県内の移設に反対してきた沖縄がこれを受け入れた背景はともかく、辺野古への移設が正式に決まったことはアジア太平洋地域の安全保障という観点からは大きな進展となる。日本ではあまり意識されていないが、辺野古への移設問題は、日中関係の重要なファクターでもあるからだ。

 米軍は現在、大規模な組織再編を行っており、沖縄に駐留する海兵隊の多くは撤退し、グアムに配置転換されることになる。こうした動きの背景には、10年間で4870億ドル(約50兆円)という史上最大規模の軍縮を米国が実施しているという事情もあるが、もっとも大きいのが中国の台頭である。

 旧ソ連と異なり、米国は中国を完全に敵国とは見なしていない。中国は交渉する相手であり、米国はアジア太平洋地域の制海権、制空権について中国と何らかの妥協を図りたいと考えている。旧ソ連のように全面戦争のリスクを考えているわけではないので、必要とされる軍事力もそれほど大きなものではなくなる。こうした情勢の変化が、大量の部隊を半永久的に沖縄に駐留させるという従来の体制から、機動力を生かした柔軟な体制へとシフトさせている。

 大部隊を常駐させず、必要に応じて沖縄を前線基地として使用するという新しい概念のもとでは、沖縄にある大量の米軍基地は不要となる。その代わり、最新の設備を備えた辺野古の基地だけは整備しておきたいというのが、米軍の意向であった。
 つまり、辺野古への移設がスムーズに進まないと、米国の対中交渉にも影響を与える可能性があったわけである。中国が日本に対して強行姿勢を取ることができた背景のひとつには、ギクシャクした辺野古移設問題があったことは否定できない。

 安倍政権は2014年中にも集団的自衛権行使を容認するための憲法解釈の変更を行う方針である。辺野古移設と憲法解釈変更が揃うことで、米側からの当面の要求事項は満たされることになる。

 日本にとって最大の懸念事項は、日本抜きで米中交渉が進み、日本がハシゴをはずされてしまうことである。今回の辺野古移設容認によってその可能性は少し減ったが、安倍首相の靖国参拝に対して米国が失望しているとの声明を発表したことで、再び日米関係に溝が出来ている。

 残念なことではあるが、現在の米国における最優先事項は米中関係であり、日米関係でない。米中交渉の進展次第では、日本が中国に対して不利な状況に陥る可能性は少なくないだろう。

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