ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

春香クリスティーンの靖国発言で浮き彫りになった、新聞切り抜きという「昭和な」習慣

 

 靖国参拝に関する発言からブログやツイッターが炎上した春香クリスティーンさんは、タレント業の傍ら、上智大学文学部新聞学科で学ぶ女子大生だ。彼女は政治家の追っかけを「売り」にしているタレントだが、おそらく彼女自身も政治に対する関心が高いのだろう。新聞学を専攻したのもこうした理由からだと考えられる。

harukakurisu

 靖国発言の内容や背景はともかくとして、今回の事件に関連して少々驚きだったのが、彼女が紙の新聞の切り抜きを丹念に実践していたという事実である。
 片付けが不得意だという彼女の部屋を紹介したバラエティ番組では、紙の新聞が山積みになっていた。その理由は「大学の授業に関連して新聞の切り抜きをしなければならないから」だという。

 昭和の時代、新聞の切り抜きというのは、情報収集・分析手段として確固たる地位を確立していた。だが、いまや国民全員が何らかのデバイスを持ち、東洋大学のように紙の願書や大学案内を廃止したところもある時代である。大学の授業で要請されているのだろうが、デジタルネイティブの女子大生がいまだに丹念に新聞の切り抜きという「昭和な」作業を行っているのだ。

 現在の形式の新聞や雑誌が出来てからすでに100年以上が経過している。新聞や雑誌に、情報ツールとしてのノウハウがふんだんに蓄積されていることは事実である。

 記事の大きさや配置など、視覚的な面で重要度を瞬時に判別できるよう工夫されているほか、見出しの付け方や重要な情報から先に記述するという独特の文章作成法など、社会情勢を効率よく把握するための数多くの手法が組み込まれている。
 多くの読者はあまり意識しないが、ニュースソースの書き方にも細かいルールがあり、それを理解できる人が読めば、当局のタレ流し情報なのか、要人によるリークなのか、特定人物の意図を背景にした憶測なのか、記事の背景を容易に想像できるようになっている。かつては新聞記事が、政局を握る大物政治家同士の隠れた情報伝達手段であった時代もある。紙を駆使したインテリジェンスという意味では、新聞はなかなかよく出来ているのだ。
 新聞学という学問では、新聞が持つインテリジェンスとしての機能を客観的に分析することが重要な役割のひとつとなっているが、その基礎となる作業が新聞の切り抜きであった。

 だがWebを中心にした電子媒体では、紙の新聞や雑誌が持つこうした空間的な効果はほとんどない。読者が媒体に行き着くルートも様々だ。紙であれば、新聞であれ雑誌であれ、目的を持って読者がやってくるが、検索エンジンからのアクセスでは、その媒体が何であるかも分からないまま読者が記事を読むことになる。またひとつの記事について全文が読まれる可能性は極めて低い。
 本誌も含めてWeb系の媒体がタイムライン方式(時系列で優劣に関係なく記事が均等に並ぶスタイル)のトップページになっているのはそういった理由からである。

 日本では依然として、この違いの善し悪しに関する議論が続いているように見える。電子媒体と比較した紙の優位性を主張する識者は意外と多い。
 だが現実問題として、優劣の議論以前に、コスト面や利便性という観点から、紙が存続できる余地は限りなく少なくなっている。紙と電子媒体のどちらが優れているかではなく、電子媒体を前提にした上で、電子媒体が不得意とする知的作業をいかに克服するかについて議論する方が、社会全体としてみれば圧倒的に効率的だ。

 日本ではいまだにFAXが大活躍しているが、米国ではすっかりFAXを見なくなった。FAXが依然として広く普及しているという現状は、紙を前提にした思考回路からまだ抜け出せていないことのひとつの象徴といってよいだろう。
 新しい技術が登場すると、しばらくの間は、新旧技術でのせめぎ合いが続く。だがITが本格的に普及してからすでに20年以上が経過している。紙と電子媒体のせめぎ合いをするフェーズはとっくに過ぎ去っていてもよい頃だ。

 春香クリスティーンさんのタレントとしての「売り」が政治であり、かつその主張が「リベラル」だというなら、紙ではなく、Web上で記事をクリッピングしていないと、やはり格好がつかないのではないか?

 - マスコミ, 社会, 経済, 芸能, IT・科学 , , ,

  関連記事

tosho
東証が企業に対して踏み込んだ適時開示をするよう指導中。背後にある問題とは?

 東京証券取引所が、投資家に対する適時開示について、より踏み込んだ内容にするよう …

kanntei
薬のネット解禁判決に対抗して政府は薬事法改正を画策。日本に「法の支配」は存在しない

 一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を禁止した厚生労働省令は違法だとして …

rikokkyoudabosu
李克強首相が中国経済の運営に自信。欧米経済の回復を追い風にバブル封じ込めか?

 中国の李克強首相は、大連で開かれている夏季ダボス会議で講演を行い「中国経済のフ …

seiyujo02
政府による上からの構造改革がスタート。弊害はないのか?

 茂木経済産業大臣は2014年6月10日、石油業界の再編を促すため、産業競争力強 …

seisansei
あまりにも低い日本の生産性。労働経済白書が示す衝撃的な現実

 厚生労働省は2016年9月30日、2016年版の労働経済白書を公表した。日本の …

okawasho
三陸沖地震のニュース速報。絶叫するNHKのアナウンサーに、疑問の声が噴出

 7日17時18分ごろ、東北地方でマグニチュード7.3の比較的強い地震が発生した …

euhonbu02
欧州景気に底入れの兆し。失速寸前といわれる中国経済の助け船になるか?

 欧州連合(EU)は8月14日、ユーロ圏17カ国における2013年4~6月期のG …

abetoranpu
トランプ政権のインフラ投資に日本の公的年金を活用との報道。政府は否定しているが・・・

 トランプ政権が掲げる総額1兆ドル(約113兆円)のインフラ投資について、その一 …

chenguangbiao
これが本当の成金だ!中国の富豪がニューヨークの慈善活動パフォーマンスで大顰蹙

 中国人の富豪で、派手な慈善活動のパフォーマンスで知られる陳光標氏が、ニューヨー …

nichigin02
日銀の量的緩和策は果たして効果を上げているのか?米国のQEと比較してみると

 日本銀行は8月8日、金融政策決定会合を開催した。量的緩和の継続を全員一致で決め …