ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

カルロス国王次女の脱税疑惑をきっかけに、スペインは過去の呪縛に挑戦する

 

 スペインのファン・カルロス国王の次女クリスティーナ王女が、脱税と資金洗浄(マネーロンダリング)の容疑で刑事訴追される見通しとなった。
 カルロス国王は、良くも悪くも現在のスペインを象徴する存在であり、これまで国王に対する批判はタブーであった。だが世論調査では国王を支持しないという国民が過半数となっており、一部には皇太子に王位を譲るべきとの声も出ている。スペインの民主主義は、カルロス国王という特殊な人物に依存する危ういものだったが、次女の訴追をきかっけにこうした体制から脱却できるのか各国は注目している。

carlos クリスティーナ王女には、元ハンドボール選手の夫と共同所有する会社で脱税と資金洗浄を行った容疑がかけられている。
 夫が代表を務めている非営利団体の資金を横領するため、所有する会社を隠れ蓑にしている疑いがあるという。首謀者は夫だが、これにクリスティーナ王女も深く関わっているという。

 これが他の王国であれば、王女の犯罪スキャンダルという話で終わるのだが、スペインにはそうはいかない事情がある。
 カルロス国王はもともと、スペインの独裁者フランコ将軍が1975年に死去したのち、フランコ将軍の遺言に基づいて王位についた人物である。だが即位したカルロス国王は独裁的な王制ではなく民主化を進めたことで、スペインは現在の体制に移行することができた。カルロス国王は現代スペインの民主主義を象徴する人物なのである。

 スペインは何としてもユーロに加盟したいという思いから、他の欧州先進各国に対して、豊かで民主的な国家に見えるよう無理に振る舞ってきた。これはかつて、西欧式の「進んだ」文化を持つ国とみなしてもらうために、西欧社会に媚び続けてきた明治政府と少し似たところがある。
 だが民主主義が根ざしていない社会でこうした制度改革を強行すれば、あちこちに歪みが出る。こうした対立をうまくまとめ、分裂することなく民主的な体制を維持するための支柱がカルロス国王だったわけである。カルロス国王への批判がタブー視されているのは、国王の権威が失墜すると、せっかく構築しかかった民主主義が崩壊してしまうのではないかという恐怖感があったからだ。
 だがこうした上からの民主主義にはどうしても限界がある。それが究極的な形で噴出したのがスペインの経済危機と考えることができる。スペインやギリシャといった、つい最近まで軍事独裁政権だった国で経済危機が起こるのは偶然ではないのだ。

 王女のスキャンダルをきっかけにカルロス国王に対する批判が出ていることは、スペイン国民が民主国家の国民として一皮むけたと解釈することもできるが、ややもすると分断の危険性があるスペインの政情を不安定にしてしまう可能性もある。

 カリスマ国王のスキャンダルに対してスペイン国民がどのようにこれを処理するのか、欧州各国は注目している。本当の意味で、スペイン人の民度が試されているといってもよいだろう。そしてスペインが置かれた状況は、我々日本人にとっても決して無縁な話ではない。

 - 政治 , ,

  関連記事

trump201611
トランプ大統領の登場で懸念される、日露急接近による地政学的リスク

 混乱の中で投票日を迎えた米大統領選挙は、土壇場でトランプ氏が逆転勝利するという …

shukinpei04
習主席の米国訪問日程が近付く。ささやかれ始めた首脳会談の本当のテーマ

 中国の習近平国家主席は、5月31日から6月6日の日程で、トリニダード・ドバゴ、 …

obama00002
財政の崖をギリギリで回避。だがマーケットはとっくに織り込み済みで驚きはなし

 オバマ大統領と与野党の指導部は、いわゆる「財政の崖」の回避に向けた協議でほぼ合 …

merukeru00
ドイツ要人が相次いで日本の円安政策を批判。基本的には国内向けなのだが・・・

 ドイツのメルケル首相は24日、スイスのダボス会議において、日本が進める為替政策 …

obamairan
イランの核問題で暫定合意に到達。本格合意なら、国際秩序の変化がさらに加速

 イランと欧米中露6カ国は11月24日、イランの核問題をめぐる協議で合意に達した …

kajino
カジノ基本法案が衆院通過。あくまで基本法であり、具体的な駆け引きはこれから

 カジノを推進するための基本法である「統合型リゾート整備推進法案」(いわゆるカジ …

kanntei
政府が2013年度のGDP見通しを上方修正。だが物価目標をめぐる政策の矛盾が露呈

 政府は28日に開催された臨時閣議で、2012~13年度の経済成長率見通しを正式 …

abe20141021b
消費低迷で高まる増税先送り論。だが現実には決断は困難?

 消費の低迷が顕著になってきたことから、消費税の10%増税に反対する声が高まって …

weibo2014
中国政府が、ネットでの言論の自由が保障されているとする白書を公表

 中国国務院(中国政府)の新聞弁公室(報道監督を担当する部署)は2014年5月、 …

kichikyoku
携帯基地局の裁判で住民が敗訴。日本人は目に見えないものが苦手なようで・・

 携帯電話の基地局が発する電波の有害性について、日本でも次第に取り上げられるよう …