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円安で株高になるのはおかしいという財界首脳の発言が象徴するもの

 

 経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済3団体は2014年1月7日、年頭会見を行った。この中で財界首脳からは、円安の進行に対して否定的な見解が相次いだ。
 急激な為替の変動が企業経営にとってマイナスになるのは事実だが、かつて財界は、円高こそが業績低迷の原因であると強く主張し、政府に対して対策を実施するよう強く求めてきたという経緯がある。今度は一転して円安を否定的に受け止める発言が出てくることに一部からは疑問の声も上がっている。

zaikaitop 会見の中で、日本商工会議所の三村会頭は「円安になったら日本の株価が上がるというのはおかしい」と述べ、円安に対して疑問視する発言を行った。また経済同友会の長谷川閑史代表幹事も「あまり円安は歓迎できない」とこれに同調した。

 円安は輸出企業の業績を上向かせる効果があるが、同時に輸入物価の上昇を引き起こす。輸入物価の上昇分を価格に転嫁できなければ企業の利益は圧縮される。円安が進行すると、場合によっては輸出企業でさえ経営が苦しくなるのはある意味で当然のことである。

 だが、円高がピークとなっていた2011年当時、財界はこぞって円高が業績低迷の原因であると主張し、政府に対策を取るよう強く求めていた。当時、日本商工会議所の会頭だった岡村正氏は「円高の進行は国内企業の空洞化につながりかねない」と強い懸念を示し、日本政府に対して企業の立地条件を高めるよう注文を付けていた。
 だが待望の円安が実現した途端、同じ財界から今度は円安が問題であるとの発言が出てきている。もちろん2011年当時とは財界首脳も入れ替わっているし、状況によって政府に対する要望が異なるのは致し方ない。だが経団連の米倉会長は当時から会長を務めているし、為替の状況が変化すれば、得する企業と損する企業が出てくることはあらかじめ分かっていることである。またグローバル経営の時代においては、本来、為替は企業経営に対してニュートラルになっているべきものである。

 「円安で株価が上がるのはおかしい」という三村氏の発言は、皮肉にも現在の日本経済の状況をある意味で如実に反映しているともいえる。
 円安の進展で得する企業と損する企業がある以上、一律に株価が上昇するのは確かにおかしいことなのかもしれない。だが円安によって株価が上昇するのは、日本経済の構造が、依然として製造業を中心とした輸出中心型から脱却できていないと市場が強く認識しているからである。またそうした日本経済の姿を代表しているのが、オールド製造業を中心に構成された現在の財界といってよいだろう。
 こうしたカルチャーに嫌気がさした楽天の三木谷社長は経団連を脱退してしまった。三木谷氏の言動については賛否両論があるだろうが、氏の行動は現在の財界の雰囲気をよく表しているといってよいだろう。

 財界メンバーが大きく入れ替わり、多様な産業の声が財界に反映されるようになってくれば、三村氏が指摘するように円安で株価が上がるというような「おかしなこと」は起こらなくなるかのかもしれない。だがその時には現在の財界首脳の発言力は大幅に低下しているはずである。

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