ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

米国の貿易収支改善が顕著に。世界経済の大きな枠組みが変わりつつある

 

 米商務省は2014年1月7日、2013年11月の貿易収支(季節調整済み、サービス収支を含む)を発表した。貿易赤字は約342億5200万ドル(約3兆5600億円)となり、前月から約13%減少した。この数字は市場予想を大きく下回っており、米国の貿易赤字改善が予想以上のペースで進んでいることが明らかとなった。

usabouekitoukei 米国経済の最大の懸念材料は、長年続いてきた経常赤字の垂れ流しであった。
 経常収支が赤字になっている最大の理由は、米国が大量の製品を輸入することによって、慢性的な貿易赤字になっていることである。
 米国は90年代以降、産業構造を大きく転換させ、従来型の製造業から、サービス業とソフトウェアを中心とする高付加価値型製造業に急激にシフトした。このため国内で製造するよりもコストが安いものは、すべて国外から輸入するようになった。もともと米国は世界最大の石油輸入国であったことから、米国の貿易赤字はみるみる膨れあがったのである。

 貿易赤字がピークに達した2000年代後半には、毎月の貿易赤字額が600億ドル(約6兆円)を超えるまでになっていた。リーマンショック直前、日本の景気が一時的に回復したのは、米国が貿易赤字を垂れ流しながら、輸入を拡大していたからである。米国のバブル的な消費の恩恵をもっとも受けていたのは、他ならぬ日本だったわけである。

 リーマンショック崩壊後も、減少するかに思われた米国の輸入はあまり減らず、高い水準の貿易赤字が続いていた。だが昨年あたりからその傾向に変化が見られるようになってきた。米国の輸入が減少するとともに、輸出が回復してきたのである。2013年の3月には貿易赤字が380億ドルと400億ドルを割り、その後は300億ドル台になることが多くなってきた。

 この背景には米国への製造業回帰の動きがある。米国は安価なシェールガスの開発が進み、近い将来、エネルギーのすべてを自給できる見込みとなっている。米国は今や、もっとも安価に、かつ安定的にエネルギーを調達できる先進国のひとつとなった。もともと物作り大国であった米国には豊富な工業インフラが揃っており、工場の誘致には適した場所である。シェールガス普及をきっかけに、米国に製造拠点を移すグローバル企業が増えてきており、これにともなって輸出の増大と輸入の減少が同時に起こっている。

 この傾向は今後、さらに顕著になる可能性が高い。米国は余剰天然ガスの本格的な輸出を開始しようとしている。輸入が減少している現在の状況に、エネルギーの輸出が加われば、貿易赤字はさらに減少していくことになる。

 一方、日本の貿易赤字は拡大傾向が続いている。算出方法が異なるのでまったく同一には比較できないが、同じ月の日本の貿易赤字額はすでに125億ドル(約1兆3000億円)に達している。GDPの規模を考えると、米国と日本はほぼ同水準の貿易赤字と考えることができる。かつて日本では米国の赤字垂れ流しを批判する意見が多く聞かれたが、今や日本は米国と同水準の赤字を垂れ流し、かつその額は今後も拡大が予想されている。

 為替は最終的には物価との連動性が高いが、貿易収支の動向にも大きく左右される。このまま米国の貿易赤字縮小と日本の貿易赤字が拡大が続けば、円安方向の圧力がさらに強まることになるだろう。ドルが世界に限りなく流出するというこれまでの世界経済の図式は大きく変わりつつある。

 - 経済 ,

  関連記事

jinkou
日本の人口減少は新次元に突入。少子化対策はむしろ逆効果なのでは?

 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は3月27日、2040年までの地域別推 …

rakutenmufg
楽天が投資判断を引き下げたアナリスト・レポートに対して異例の批判

 楽天は7月2日、同社に対する投資判断を引き下げた三菱UFJモルガン・スタンレー …

hiroshimadosha
多発する土砂災害。日本は国土開発のあり方を再考すべき時期に来ている?

 広島市で起きた大規模な土砂災害から1週間以上経過したが、これまでに70人以上の …

bitcoin
ビットコインの分裂騒動は、真の金融インフラになれるのかの試金石

 仮想通貨ビットコインが8月1日に分裂するのではないかという騒動が発生している。 …

newyork01
中国と米国で相次いで製造業指数が悪化。すべては米国頼みの構造に

 中国と米国で製造業に関する良くない指標が続いている。米供給管理協会(ISM)が …

leekanyunamida
シンガポール「建国の父」リー・クアンユー死去。独立当初は、絶望感で涙を流した?

 シンガポール建国の父と呼ばれるリー・クアンユー元首相が2015年月23日、同国 …

businessman04
2016年4~6月期GDPは事実上ゼロ成長。財政も需要の先食い状態が続く

 内閣府は2016年8月15日、2016年4~6月期のGDP(国内総生産)速報値 …

baidenindo
米国のバイデン副大統領がインドを訪問。意外に疎遠だった米国とインドの経済関係

 インドと米国があらたな経済連携に向けて対話を始めている。米国のバイデン副大統領 …

amazondrone
米国で無人機と旅客機がニアミス。無人機の認可方針にも影響か?

 米フロリダ州の空港近くで、旅客機に無人機が異常接近(ニアミス)するという事態が …

opec02
OPECが原油価格暴落にもかかわらず、減産を見送った背景

 OPEC(世界石油輸出国機構)は2014年11月27日、オーストリア・ウィーン …