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ゲーツ元国防長官のオバマ大統領批判から、文民統制の本当の意味を考える

 

 米国のゲーツ元国防長官が近く発売される回顧録の中で、アフガン戦争をめぐるオバマ大統領の対応について厳しく批判していることが明らかになった。米メディア各誌が報じている。
 ゲーツ氏はブッシュ政権とオバマ政権の両方で国防長官を務めた珍しい人物。オバマ大統領は、アフガン戦争が継続していることから、しぶしぶゲーツ国防長官の留任を受け入れたといわれている。両氏が不仲であることは想像の範囲内だが、現職大統領についてこれほど厳しい批判をするのは珍しい。

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 ゲーツ国防長官はCIA出身。新卒でCIAに入局後、情報分析一筋で副長官まで昇進したコテコテのCIA官僚である。
 その後大統領補佐官に転じたのち、ブッシュ(父)政権時代にとうとうCIA長官に任命された。CIA長官は政治家が就任するケースがほとんどであり、CIA局員出身者がトップになるのは初めてのことであった。
 その後、ブッシュ(息子)政権では国防長官に任命され、イラク戦争やアフガン戦争を指揮している。オバマ大統領の就任と同時に国防長官を退任すると思われていたが、ゲーツ氏は留任となった。この人事は作戦の継続性を強く主張する軍側の意向が強く働いた結果といわれている。

 オバマ大統領は基本的にアフガン戦争からの早期撤退を望んでおり、戦争継続を希望する軍や軍需企業とは当初から対立していた。
 ゲーツ氏はオバマ大統領について「アフガン戦争を他人事のように捉えている」「カルザイ大統領を嫌っている」「彼にとっては、戦争から抜け出すことがすべてだ」などと手厳しく批判している。だが、オバマ大統領は基本的に戦争からの撤退を期待されて大統領に就任した人物であり、オバマ大統領の言動はある意味で当然のことといえる。
 どのようないきさつがあるにせよ、自分自身を国防長官に指名した最高指揮官である大統領を部下が批判するというのは、やはり筋違いであるとの印象はぬぐえない。

 ゲーツ氏による声高な批判は、やはり官僚出身者の限界を感じさせる。官僚は実務の継続性がすべてであり、大所高所からの判断を不得意としている。また本来、そのような役割を求められているわけでもない。官僚は国民から選ばれたリーダーの指示にしたがい、的確に実務を遂行するためのプロであり、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
 選挙で選ばれた大統領から指名される国防長官は限りなく選挙で選ばれた人物に近い存在である。だがゲーツ氏は実務官僚から脱却することができなかった。回顧録でゲーツ氏は国防総省の官僚主義的な仕事の仕方についても批判しているが、典型的な官僚出身者であるゲーツ氏が官僚主義を批判しているのは少々滑稽ですらある。

 現在のオバマ政権で国防長官を務めるのは、軍、実業界、政界と豊富な経験を持つヘーゲル氏であり、同氏の就任はオバマ大統領の強い要望で実現したといわれている。国務長官のケリー氏もオバマ大統領と親交の深いベテラン政治家であり、現政権における安全保障チームのコミュニケーションはスムーズだ。

 ゲーツ氏の回顧録を通じた一連の発言は、あらためてシビリアン・コントロールの重要性を認識させる結果となっている。シビリアン・コントロールという言葉は、日本では軍人ではない人(文民)が軍を統率するという意味に理解されているが、厳密にはこれは間違いである。
 軍人であろうがなかろうが、国民から選ばれた正当性のある人物が軍や官僚組織を統率するというのが本来の意味になる。その点で、ゲーツ氏が国防長官を留任していた初期オバマ政権は、シビリアン・コントロールが十分でなかったということになる。

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