ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

官製ベンチャーキャピタルの産業革新機構は、まるで公共工事のゼネコン

 

 産業革新機構は2014年1月8日、日米両国のベンチャー企業育成を手がける株式会社Willが運営する投資ファンドに対して1億ドル(約105億円)を出資すると発表した。同機構は昨年後半から東京大学エッジキャピタルなどベンチャーキャピタルへの出資を相次いで行っている。

meti03 本来の設立目的であったベンチャー投資をようやく本格的にスタートさせたわけだが、他のファンドにお金を出す(ファンド・オブ・ファンズ)というスキームが続いている。そこには2600億円もの巨費が投入されたものの、投資する先がなかなか見つからないという根本的な問題が横たわっている。

 産業革新機構は、次世代の国富を担う産業を創出するという理念のもと、経済産業省主導で2009年に設立された官製ベンチャーキャピタルである。政府が2600億円の出資を行うとともに、1兆円もの保証枠を設定しているが、当初から機構の活動に対しては疑問の声が上がっていた。
 民間のベンチャーキャピタルが目を皿のようにして探し回っても優良な投資先がないというのが現在の日本の状況であり、官のベンチャーキャピタルが出てきたところで、その状況が大きく変わるわけではない。官主導で組織を作り、国がカネを付けてしまうと、それが既得権益化してしまい、存在そのものを自己目的化しかねないという危険性も指摘されていた。

 実際、機構がスタートしても優良な投資先はなかなか見つからず、オーストラリアやチリの水道会社など、本来の趣旨とは異なる途上国援助的な投資を繰り返していた。その後、同機構は経営破綻の危機にあったルネサスエレクトロニクスの救済に乗り出すことになり、ベンチャーキャピタルから事業再生ファンドに事実上の方向転換を行ったかに見えた。

 ルネサスの再建に一定のメドが立ったことで、ようやく本来の目的であるベンチャー投資を本格的にスタートさせたわけだが、自社投資も行っているものの、他のベンチャーキャピタルへの間接出資というスキームが目立つ。

 金融業界では、直接投資をせず、すでにあるファンドに出資する形式を「ファンド・オブ・ファンズ」と呼ぶ。英語で書くとなかなかスマートだが、要するに投資業務の丸投げである。確かに2600億円もの投資資金があると、1社あたり1~2億円程度という少額投資が中心のベンチャー投資の分野では、とても処理できないというのが現実であろう。

 だが本来ベンチャー投資とは小さい案件を一つずつコツコツとこなしていくものであり、何千億円もの資金を一気に投じるような世界ではない。もし機構がこの大量の資金を持て余しているのだとしたら、そもそもの設立の趣旨が間違っているのである。
 米国にはこうした小口投資をとりまとめ、大口投資家との橋渡しを行うゲートキーパーというシステムがある。だがゲートキーパーは最小限の人数とコストで実施するものであり、産業革新機構はゲートキーパーとしてはあまりにも規模が大きすぎる。

 産業革新機構に投じられた資金の源泉は財政投融資資金である。国民のお金が産業革新機構を通る段階で、高給で知られる機構職員の給与分として中抜きされ、投資されるベンチャーキャピタルでもさらに中抜きされる。最終的にベンチャー企業に到達するまでには、かなり減額されてしまっていることになる。これは公共事業を受注したゼネコンが、次々に業務を下請けに丸投げし、そのたびに金額が中抜きされる構図と大して変わりはない。

 公共事業のゼネコン体質が、ベンチャー育成の分野に入れ替わっただけと考えることもできる。ベンチャー企業によるイノベーションを通じて次世代の産業を作り出すという趣旨からはほど遠い状況といえる。

 - 政治, 経済 ,

  関連記事

sony
ソニーがiTunesに楽曲を提供開始。とうとうAppleの軍門に下る。

 ソニーは7日、米Apple社が運営するiTunesストアにおいて子会社のソニー …

amari
政府が正式にTPP交渉参加を表明へ。だが交渉は大詰めで時すでに遅しか?

 安倍首相は3月15日に、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加を正式 …

nyse03
絶好調な経済を背景に米国株への関心が高まる。だが本当に落とし穴はないのか?

 投資家の間で、米国株に対する関心が急速に高まっている。米FRB(連邦準備制度理 …

koutei
野田元首相が公邸に住まない安倍首相を批判。歴代首相はなぜか私邸住まいが多い

 国家の安全保障を極めて重視している安倍首相がなぜ首相公邸に住まないのか?とWe …

capitolhill
TPAがようやく可決。米議会はなぜ外国との通商権限を持っているのか?

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉に重要な役割を果たす、米国の大統領 …

abe20150630
財政再建は経済成長頼みで結論先送り。肝心の成長戦略は弾切れ状態

 政府は2015年6月30日、経済財政運営の基本方針「骨太の方針」と新しい成長戦 …

minpaku
民泊法案が今国会で成立の公算。年間日数制限でビジネス目的は困難に?

 住宅の空き部屋を旅行者などに有料で貸し出す、いわゆる「民泊」の解禁を目的とした …

firefoxOS
2500円の製品も!進む海外のスマホ価格破壊は日本に何をもたらすか?

 新興国市場にターゲットを絞った格安のスマホが相次いで登場している。フィンランド …

kurodashirakawa
実は似た者同士?正反対といわれる黒田、白川両総裁には共通の目的があった?

 従来の日銀とはまったく異なる異次元の金融政策を打ち出した黒田総裁は、前総裁の白 …

okanekazoeru
大手メーカーによる下請けへの支払サイト延長措置。経済全体に悪影響はないか?

 大手電機メーカーの支払いサイト(下請けなどに代金を支払うまでの期間)が長くなっ …