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訪日外国人1000万人時代が到来。だが日本は本当に観光立国を目指しているのか?

 

 政府観光局は2014年1月17日、2013年の訪日外国人数が1036万人だったと発表した。過去最多だった2010年の861万人を大幅に上回った。日本政府は訪日外国人旅行者数を1000万人とする目標を立てており、昨年12月にこれを達成した。最終的な訪日外国人数が発表されたことで、あたらためて1000万人来日時代に入ったことが確認された。

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 とりあえず日本政府による外国人観光客誘致の最初の目標はクリアしたわけだが、重要なのは今後の展開である。
 このところ日本は輸出の減少と輸入の拡大が続いており、慢性的な貿易赤字体質となっている。この傾向は今後も続く可能性が高く、輸出で外貨を稼ぐという時代は完全に終了したと考えてよい。

 外国人観光客を積極的に誘致するという目標を政府が掲げているということは、観光を大きな産業に育て、外貨獲得や雇用拡大の手段にするということを意味している。だがグローバルに見た場合、1000万人という数字は観光業としてはあまりにも小さすぎるというのが現実である。

 一般に観光業が盛んな国というのは、長い歴史があり、1000万人規模の大都市を擁していることが多い。日本はこの条件を満たしているのだが、日本が受け入れる外国人観光客の数は、同じ条件の諸外国と比較すると異常に少ない。英国は毎年3000万人、米国や中国は6000万人、フランスにいたっては 8000万人もの観光客が訪れている。これほど観光客が少ないのは実は日本だけなのである。
 地理的条件が不利であることをその理由にあげる人も多いが、場所が近い中国が日本の6倍もの観光客を受けれている事実を考えると、それはあてはまらない。やはり潜在的な集客力に比べて、実際の成果が追い付いていないと考えるべきだろう。

 もし日本が本当に観光業を大きな産業に育てようというのであれば、この規模では国際競争力という観点でまったくお話にならない。少なくとも3000万人以上の訪問がなければ、観光という世界マーケットで一定の影響力を持つことは難しく、日本経済に対しても目立った効果はないだろう。だが今後、数倍の外国人観光客を本気で受け入れるとなると、国内でもそれなりの覚悟が必要となってくる。
 1000万人程度ではあまり意識されなかったかもしれないが、これが3000万人、5000万人となってくると、それに比例してトラブルも数多く顕在化してくることになるからだ。

 日本人の中で、ホンネの部分では外国人に来て欲しくないと思っている人はかなり多いと考えられる。1000万人では大きな問題にはならないが、3000万人になるとこれは確実に大きな障害となる。国際化というとすぐに英語という短絡的な発想になりがちだが、問題の本質はそこではない。
 まったく異なる思考回路や価値観の人間が存在するということを前提に物事を考えるという、ムラ社会では経験したことのない行動様式が求められることになる。また外国人向けにビジネス・インフラを整備するとなると、場合によっては既存の産業が衰退するところもでてくる。こうした部分での利害調整もより面倒になってくる。

 日本が持つ潜在力を生かして、大量の外国人観光客を受け入れることができれば、今後縮小が続く日本経済に確実にプラスの影響を与えることができる。しかし、それは中途半端な体制では実現することはできない。外国人観光客を本当に増加させ、観光を基幹産業の一つとして育てるつもりがあるのか、そして、そのデメリットも含めて受け入れる覚悟はあるのか、日本人は決断しなければならない時期に来ている。

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