ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

米国防総省が中国の技術開発を追跡するプロジェクトを開始。これが意味すること

 

 米国防総省は中国の技術開発が安全保障上の脅威になる可能性が高いとして、中国が開発する新技術の特許出願状況などを包括的に追跡するプロジェクトを開始する。米メディアが伝えている。

pentagon

 中国による特許出願は現在急激な勢いで増えており、単純な出願件数ベースではすでに世界1位となっている。
 出願される特許の中には、軍事技術に直結するもの多く、こうした特許は2012年には前年比で35%も増加したという。こうした状況が続けば、近い将来、中国の新技術が米国の安全保障に大きな影響を与える可能性がある。

 こうした事態を受けて国防総省では、中国を念頭に、外国が開発した軍事技術を包括的に追跡するプロジェクトを立ち上げ、継続的に開発動向を分析することにした。
 プロジェクトには、テクノロジーウォッチ、ホライズンスキャンといった手法が用いられる。これらは将来予測の分野では比較的多用されている手法で、あらゆる分野の新技術をリサーチし、それらがどのように応用されていくのか関連付け、軍事的脅威について分析するというものである。

 国防総省が中国を対象にこうしたプロジェクトをスタートさせたということは、これまで先進国のものまねが中心であった中国の技術開発レベルが急激に上昇していることを示唆している。またテクノロジーをめぐる覇権の図式が大きく変わったことも同時に意味している。

 かつて国防総省が技術開発の動向を探る先は日本であった。日本が民生用に開発した新技術で軍事転用可能なものは多く、これらは米国の懸案事項の一つであった(デュアルユース・テクノロジーと呼ばれていた)。
 例えば日本の塗料メーカーが高層ビルや橋梁によるテレビの電場障害を防止するために開発した塗料は、現在のステルス技術の基礎となっている。在日米軍には、日本企業の技術動向を継続的に情報収集する部門が設置され、ジャーナリストや学者など民間人になりすました諜報員が、取材や物作りに関する研究といった形で、米国の脅威となる技術動向を常に探っていた。

 だが時代は変わり、米国は日本の技術には脅威を感じなくなった。その代わりに中国の技術動向に神経をとがらせるようになっている。かつて石原慎太郎氏が切れ味のある国会議員だった時代、「日本が半導体の供給を止めれば、米国は核ミサイル一発すら発射できない」と発言し物議を醸したことがあった。だが、その立場は中国に取って代わられつつある。

 米国はいまだにテクノロジーの分野で最先端を走っており、日本だけが遅れを取ってしまったわけだが、その理由ははっきりしている。ハードウェアを中心とした80年代の思考回路から抜け出すことができなかったからである。日本は、真空管からトランジスタ、IC、LSIというハードウェアの進化にはうまく対応したが、そこから先のソフト化とオープン化に追い付くことができなかった。

 現在の日本には、かつての技術大国の時代を懐かしんだり、むやみに日本の技術を賞賛する現実逃避的な雰囲気が蔓延している。だが技術開発はいってみれば戦争そのものであり、戦争を着実に遂行するためには感傷に浸っている余裕はないはずである。技術で後れを取ったという、冷酷な現実を直視することこそが、日本の技術を復活させるための第一歩といえるだろう。

 - 政治, IT・科学 , ,

  関連記事

uknuclear
英国の原発事業に中国が過半数の出資。日本の原発メーカーの戦略にも影響?

 英国と中国は10月17日、英国に建設する次世代原発の運営企業に中国が過半数の出 …

fokurando
領有権問題が発生しているフォークランドで英国残留を問う住民投票。反対票はわずか3票

 英国が実効支配し、アルゼンチンが領有権を主張している英領フォークランド諸島で、 …

no image
イランの核開発能力が倍増というIAEA報告書は出来レース?

  IAEA(国際原子力機関)は、イランが核兵器開発に必要なウラン濃縮の能力を2 …

pionieer
パイオニアが伝統の音響機器事業に見切りを付け、カーナビ分野に注力

 パイオニアは2014年9月16日、大規模な人員削減や事業再編を伴う今後の事業方 …

anchols
韓国大統領選挙。無所属の安候補が突然辞退。不透明さが漂う韓国社会

 韓国大統領選挙の野党候補一本化交渉の当事者であった安哲秀ソウル大学教授が23日 …

lngusa
米国産LNGが日本に到着。エネルギー調達の多角化は進むのか?

 硬直的だった日本のエネルギー調達に変化の兆しが見え始めている。きっかけになった …

blackberry10
起死回生を狙ったブラックベリーの新OSは評価がいま一つ。社名変更も株価は下落

 スマートフォンの草分けとして知られる「BlackBerry」を開発しているカナ …

kadokawadowango
KADOKAWAとドワンゴが経営統合。相互補完的でプラスになる可能性

 角川書店を中心とするメディア企業のKADOKAWAと、動画配信大手のドワンゴが …

cop20a
京都議定書に変わる新しい枠組みを議論するCOP20。米中欧主導で日本は不利に?

 地球温暖化対策に関する国連の会議「COP20」が、南米ペルーで12月2日から開 …

matsuzawa
松沢・前神奈川県知事が都知事選に出馬を表明。だが前回の都知事選での失態はイタい

 前神奈川県知事の松沢成文氏が8日午後、都庁で記者会見を行い、12月に行われる東 …