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甘利経財相が日本の輸出不振に言及。アベノミクスは現実路線に転換?

 

 日本の輸出に対する安倍政権のスタンスが現実を反映したものに変わってきた。円安になれば輸出が回復するという、一種の迷信から脱却できた意義は大きいが、根本的な解決策をめぐってはまだ迷走が続いている。

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 2013年11月の経常赤字が過去最大の5928億円に達したことを受けて、甘利経済再生担当相は2014年1月14日、「貿易立国の原点が、若干揺らいでいる」と述べ、輸出不振について言及した。
 また「円安で輸出環境が良くなっているにもかかわらず思ったほどスピーディーに輸出が拡大していない」とし、円安が必ずしも輸出増大につながっていないことを認めた。

 かつては円高こそが日本経済低迷の元凶とされ、その後発足した安倍政権は、輸出産業の復活を掲げて事実上の円安誘導政策を行った。だが円安が実現しても輸出数量は増えず、逆に輸入価格の増大によって貿易赤字が急拡大してしまった。
 当初安倍政権は、円安の効果が顕在化するまでにはタイムラグがある(いわゆるJカーブ効果)として、円安が輸出の増大をもたらすとのスタンスを崩していなかった。だが円安開始から1年以上が経過したにも関わらず、輸出数量が増えず、経常赤字が増大しているという現実を前に、とうとう軌道修正を余儀なくされた格好だ。

 ドイツや米国と異なり、日本の製造業の多くは、依然として大量生産型の古いビジネスモデルを続けている。こうした形態では韓国、中国、ASEANといった新興国との価格競争に巻き込まれることは必至であり、国内生産を維持していてはコストが合わない。海外調達、海外生産が進むと、輸出の絶対量が減ってしまうため、円安になっても貿易黒字は増えないのである。これは円安が始まる前からすでに予想されていたことである。

 こうした状況について、安倍政権の経済スタッフはよく承知しているはずだが、政治的環境からそれをストレートに発言できない状況が続いてきた。今回甘利氏が輸出不振を認めたのは、渋々現状を受け入れたというよりは、タイミングを見計らって、徐々に軌道修正を図っている可能性が高い。

 ただ輸出不振に対する解決策についてはっきりとした方向性は示されておらず「輸出環境をさらに整備し、貿易赤字幅の縮小に取り組む」という発言にとどまっている。
 輸出不振の最大の原因は、日本企業のビジネスモデルの問題であり、これは雇用も含めた、日本の産業構造そのものに大きく依存している。構造改革はある意味でこれを変革するためのものであったが、日本では大きな変革は実施しないことがほぼ国民の総意となっている。

 つまり輸出の不振は構造的な問題ということになり、この状況を根本的に変えることは難しい。輸出不振の影響を緩和する現実的な方策は、海外への投資を加速させ、そこからの投資収益(所得収支)を増大させることである。所得収支がさらに増えれば、貿易赤字を減らすことはできなくても、その影響を最小限に食い止めることができる。幸いにして、円安が進んだとはいえ、まだ円の価値は高く、海外に対する購買力は維持できている。

 国内の雇用を多少犠牲にしてでも、海外への投資を加速させることがもっとも効果的な政策であり、本来、アベノミクスにおいては、最優先で取り組むべき課題であった。ただ、安倍政権がここまで言及できるようになるまでには、もうしばらく時間がかかるのかもしれない。

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