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経団連がベア容認に方向転換。安倍政権との関係改善を優先か?

 

 大企業を中心にベースアップを容認する動きが顕著になってきた。基本的には安倍政権による賃上げ要請を受けた政治的配慮だが、業績が好調な企業を中心に、実際に昇給が実現する可能性が高くなってきた。
 だが一方で日本はインフレが進み始めており、賃上げはインフレを加速させる可能性がある。中小企業の経営は依然として厳しく、大企業中心の賃上げは格差拡大をもたらす可能性もある。

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 経団連は、2014年の春闘に向けて、ベースアップを促す方向性を打ち出した。安倍政権による賃上げ要請に対しては、これまでのところ賞与など一時金で対処するという方針を崩していなかったが、ここにきてベア容認に舵を切った。経団連が賃上げに前向きな方向性を示したのは6年ぶりのことである。

 経団連では6月に就任する予定の新会長に安倍政権に近い東レの榊原会長を内定したばかり。現会長の米倉氏は安倍政権の政策をことあるごとに批判し、現政権との折り合いが悪かった。新会長内定の直後にベア容認に転じた背景には、政権との関係修復を計りたいという政治的配慮があると考えられる。

 すでに一部の大企業はベアを実施する姿勢を示していたが、経団連がベア容認の方向性を打ち出したことで、実施に踏み切る企業がさらに増えてくる可能性が高い。賃上げとなる企業の労働者にとっては朗報だろう。ただ日本全体として見ると、このタイミングでの賃上げは何とも微妙な状況である。賃上げは、現在進みつつあるインフレを加速させる可能性があるほか、中小企業労働者との格差を拡大させてしまうからである。

 なかなか実感が湧かないが、日本はすでにインフレが進みつつある。11月の消費者物価指数は代表的な指数(コア指数)が1.2%になるなど、米国並みのインフレ率となっている。だが、それは内需拡大によるものではなく円安による輸入物価上昇が引き金となっている。この状況で賃上げが進むと、物価上昇をさらに加速させてしまう可能性がある。

 大企業は過去最高水準の利益と内部留保を実現しているが、それは多分に下請け企業への値引きによって実現している側面がある。中小企業の経営はまだ改善しておらず、賃上げを実施する体力がないところがほとんどだ。賃上げが大企業だけにとどまれば、中小企業と大企業の間での賃金格差が拡大する可能性もある。

 アベノミクスは第3の矢である成長戦略が不発となっており、継続的な経済成長の道筋が描けない状況となっている。本来であれば、成長戦略が軌道に乗り、中小企業の経営体力が十分に回復してから、賃上げが進むことが望ましい。公共事業の拡大で何とか景気を維持しながら、その恩恵を受ける大企業を中心に賃上げが進むという、いびつな状態がしばらく続くことになる。

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