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日本全体のバランスシートを見ればお金が出回らない理由がよく分かる

 

 内閣府は2014年1月17日、2012年度の国民経済計算を発表した。資産から負債を差し引いた国全体の正味資産(国富)は、前年比ほぼ横ばいの3000兆円となった。2007年度以降、連続して国富が減少してきたが、ようやく国富の減少が下げ止まった可能性がある。

money009 日本は安倍政権発足後、大型の公共事業によって見かけ上は景気が底入れした。だが世の中にお金が循環しているという印象はなかなか持てない状況が続いている。それは日本全体のバランスシートが硬直化した状態が続いているからである。

 日本が所有する資産の総額は約8700兆円ほどある。このうち金融資産は約6000兆円となっており、全体の約7割を占める。
 主に事業者が保有する生産資産は1600兆円、不動産を中心とする有形非生産資産は1100兆円である。負債は5700兆円あるので、差し引き3000兆円の賞味資産ということになる。

 経済において重要なのは企業の設備投資だが、事業者が所有する生産資産は前年に比べて約1%減少している。一方で、企業が保有する現預金は2.8%増加した。生産資産は2008年以降、一貫して減少しているが、現預金はずっと増加傾向が続いている。本来企業は、資金を投資して事業を開拓していく必要があるが、ひたすら貯金に励み、殻に閉じこもったままなのだ。
 これは家計も同じである。家計の資産についても2008年以降減少が続いてきたが、現預金だけは着実に増加している。お金が世の中に出回っていない状況が想像できる。

 量的緩和は、こうした胎蔵されたマネーを世の中に循環させるための政策のひとつである。量的緩和策の効果として期待されているもののひとつに資産効果と呼ばれるものがある。それは株式や不動産の価格が上昇して含み益が出ると、その一部が消費に回され経済が活性化するというものである。
 日本ではアベノミクスによって株価や不動産価格が上昇したが、ごく一部の富裕層しか消費を拡大していない。それは日本の家計が現預金と市場価値のない不動産に偏っているため、アベノミクスの恩恵を受けられない仕組みになっているからだ。
 家計が支出を増加させないので、企業も思い切った設備投資ができず、結果的に銀行預金だけが増えていくことになる。

 家計の資産は約2500兆円ほどあるが、このうち、株式の占める割合はわずか4%である。全体の25%を占める不動産も大半が市場価値がない。これが米国の場合だと、資産の大半が市場価格に連動しており、一旦株高が始まると庶民も株高の恩恵を受けられるため、すぐに消費が復活する。

 量的緩和策を軌道に乗せるためには、制度改革を通じてお金が市場に出回るための環境整備を併せて実施する必要がある。本来であれば、成長戦略の中にこうした制度改革が盛り込まれているべきなのだが、現在の成長戦略にはこうした視点は見当たらない。
 というよりも、構造改革に関する議論は、小泉政権以後、国内ではタブーとなっており、成長戦略に盛り込むことが政治的に困難なのだ。せっかくの量的緩和やアベノミクスも、制度改革を実施しないことによって、その効果が半減してしまっている。

 景気には循環が存在しており、時間的な限度がある。構造改革を伴わない形でのアベノミクスは、効果が発揮されるまでにかなりの時間がかかり、その間に景気は再び下降局面に入ってしまう可能性がある。アベノミクスは時間との勝負になりつつある。

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