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形骸化が進む成長戦略の議論。法人税減税はもはや無意味になりつつある

 

 成長戦略に関する議論の形骸化がさらに進みつつある。政府は2014年1月20日、経済財政諮問会議を開き、対日直接投資の促進策などについて議論した。民間議員からは法人税の実効税率を25%程度まで引き下げるべきとの提言があったが、麻生財務大臣は税収という観点から否定的見解を示した。

abeaso 法人税減税は今や成長戦略における最後の目玉となりつつあるが、日本市場に対して外国からの投資が集まらないのは法人税の高さが原因ではない。
 既得権益ばかりを保護するがんじがらめの規制やオリンパスなどに代表されるような企業経営の不透明性の影響が極めて大きい。これらに風穴を開けると期待された戦略特区も、現在では完全に骨抜きの状態となっている。法人減税単独の議論はすでに意味をなくしたといってよい。

 財務省よると、日本の法人税の実行負担率は約35.64%である。これに対してフランスは33.3%、ドイツは29.6%、中国は 25%、イギリスは24%、シンガポールは17%となっており、日本の法人税は相対的に高いとされている。

 法人税の高さが諸外国からの投資の妨げになっているという理屈なのだが、これは一種の都市伝説に近い。世界でもっとも投資が集まっているのは当然米国なのだが、米国の実効税率は40%超と突出して高い。もっとも税金が高い市場に、世界から最も大量のお金が集まっているのである。
 企業は投資家は税率だけで投資先を決めているわけではない。むしろ税率よりも、市場の活発さ、自由さ、透明性、公平性など、税率以外の部分が極めて大きく影響する。シンガポールに資金が集まっているのは税率の低さもあるが、外国資本に対する徹底的な保護政策が存在していることが大きな要因である。

 この点で日本は最下位グループに属しているといってよい。国内には、官庁や独立行政法人、既存の大企業など、既得権益を守るための規制が山のようにある。また資本市場における透明性は、下手をすると中国や韓国並みに低い。仮に税率を低くしたところで、投資資金は集まらない可能性が高いのだ。

 さらに高いといわれる実効税率にも実はカラクリがある。日本には大手製造業を中心に、数々の免税措置があり、実際に支払っている税金は見かけよりもはるかに少ないのである。ベンチャー企業や外資系企業はこうした特権を享受することができないため、日本市場では不利な戦いを強いられる。このような市場に参加してくる外国資本はない。

 1月18日に開催された産業競争力会議では、国家戦略特区の規制緩和概要が決定された。事前の予想通り、いわゆる岩盤規制はすべて保護され、規制緩和は名実ともに実施しないことが確定した。規制緩和を一切進めないというスタンスの下での法人税減税は、ただ税収を減らすだけであり、ほとんど効果がない。皮肉にも麻生氏の指摘は当たっているのだ。

 だが、こうした状況はもはや致し方ないのかもしれない。日本は経済の官製化が進み、すでに国民の多くが、官による規制によって雇用を確保され、利益を得ているのが現実である。改革を進めれば、短期的には国民の大半と利益相反を起こす可能性が高い。
 日本国民は変化を積極的に受け入れ、高い成長と豊かさを目指すという道ではなく、変化が少ない代わりに相対的に貧しくなる道を選択したといってよい。そうだとすると「構造改革を実行する」という安倍政権のスローガンは誰に向けて発信されているのだろうか?

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