ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

人工知能の事業化が本格的にスタート。日本がこの分野で不利である最大の理由

 

 人工知能の事業化が急ピッチで進みそうな状況になってきた。米IBMは2014年1月9日、人工知能を搭載した高性能コンピューター「ワトソン」の事業化に向け10億ドル(約1040億円)を投資すると発表し た。2000人規模の事業部門を設立し、幅広い業種への導入を目指す。

ibmwatson

 ワトソンはIBMが開発した人工知能を備えたコンピュータ。人間の会話など自然言語を理解し、膨大なデータベースから必要な情報を集め、適切な解を導き出す能力を持っている。
 米国の人気クイズ番組で、人間のチャンピオンを破ったことで、その能力が世界的に知られることになった。

 IBMはこれまで人工知能の開発に膨大な投資を行っており、10年以内に関連事業で100億ドルという同社の目標を達成したとしても、それほど大きな利益にはならないとの見方もある。
 だが人工知能については、インターネットの登場以降、最大のイノベーションともいわれており、グーグルなどIT各社が積極的に取り組んでいる。グーグルは2014年1月27日に、英国の人工知能ソフトウェア企業であるディープマインド社を4億ドルで買収すると発表した。どの程度の利益をもたらすのかという算段とは無関係に、こうした事業化の動きは今後、一気に加速する可能性が高い。

 人工知能は様々な分野での応用が期待されている。人工知能を使えば、人間は自然言語でコンピュータと対話できることになるため、ある意味ですべての分野に導入することができる。
 すでに米国では薬剤師の処方や医師の問診などがスタートしているし、自動車の自動運転は、人工知能がもっとも生かされやすい分野のひとつといってよいだろう。家電や公共サービス、あるいは学校教育などあらゆる場面で人工知能は普及してくることになる。もちろん、最近商用化が進みつつあるロボットと人工知能は切ってもきれない関係にある。

 米アマゾンはこのところ、無人機を使って商品を配送するサービスや、顧客が注文することを先回りして商品を出荷してしまうサービスなど、奇抜なアイデアを次々に打ち出しているが、実はこれらの背景には人工知能の存在が大きく関係しているのだ。

 残念ながらこうした分野で圧倒的なリードを保っているのは米国であり、日本勢はかなり出遅れている。日本はハードウェアの製造や機器の制御など、個別の分野では優秀な技術を持っているが、ソフトウェアの開発や、各要素技術をオープンな形で統合し、新しい技術やサービスとして再構築する作業は得意としていない。だが人工知能の事業化において重要になるのは、こうした総合力なのである。

 日本がこうした部分で出遅れてしまう原因のひとつに、過剰な政府の規制がある。イノベーションの進展には、経験のないことに対して「とりあえずやってみよう」というスタンスが非常に重要となる。

 米国の法体系が「原則自由、状況に応じて禁止」であるのに対し、日本の法体系は「原則禁止、状況に応じて解禁」というスタンスであり、新しい事にチャレンジできないようになっている。調剤や問診の人工知能化、無人機による配送などは、現状ではまず不可能だろう。自動運転の公道実験も、道交法との関係があり、なかなか前に進まないのだ実情だ。政府の規制が厳しいことが、新しいことを拒絶する社会風習を生み出しており、さらに悪循環になっている。

 日本が新興国であった時代には、よいものを安く大量生産できれば一定の競争力は確保できた。だが成熟国家となった今、そのような低付加価値な産業モデルは通用しない。アベノミクスの成長戦略では、特定産業や特定技術を財政的に支援する従来型の産業政策が基本となっている。そろそろ民間の自主的なイノベーションを促す政策に切り替える時期に来ているといってよいだろう。

 - 経済, IT・科学 , ,

  関連記事

abetokku
日本の成長戦略はどう進めるべきなのか?フランスの失敗から学ぶことは多い

 経済活動に対して政府が強く関与するなど日本との共通点が多いフランスの経済政策が …

touchou
うつによる休職や他社への転職、さらには出世候補までシステムが予測する時代に!

 「営業部の佐藤さんはうつで会社を休む可能性が高くなっています」「開発部の高橋さ …

zenjndaikaijou02
中国鉄道省の解体は日本の国鉄民営化と同じ。高度成長の終了を意味している

 中国・北京で開かれていた第12期全国人民代表大会(全人代=国会に相当)は17日 …

jrkyushu
JR九州の株式上場計画。政府支援の是非など、克服すべき課題が山積

 九州旅客鉄道(JR九州)が2016年度中の株式上場に向けて動き出した。だが、完 …

iot
IoTに関する産学官協議会が米国勢に合流。最悪のガラパゴスは回避したが・・・

 あらゆるモノをインターネットにつなげる「IoT」の分野において、日本勢が米国勢 …

kurodashirakawa
黒田総裁らしからぬ中途半端な補完措置。白川時代を彷彿とさせるという声も

 日銀が打ち出した「補完措置」をめぐって市場の混乱が続いている。追加緩和なのかそ …

no image
資産家夫婦殺害事件とJASDAQ粉飾疑惑企業を結びつける点と線

 スイス在住で日本に一時帰国していた資産家夫婦が行方不明になっている事件で、2人 …

toshiba03
東芝の不正会計問題。自己資本並みに大きい「のれん代」は大丈夫なのか?

 不正な会計処理が問題となっている東芝は2015年7月21日、田中久雄前社長、佐 …

ieren201409
絶妙だったイエレンFRB議長の株高発言。金利引き上げタイミングは中立になった

 米FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長は2015年5月6日、米国株式市場 …

sumsung
大統領選挙でも争点に!韓国の財閥支配の温床「循環出資」とは?

 韓国は財閥が支配している国として有名である。韓国における財閥の影響力は極めて大 …