ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

「飲みニケーション」に関する単純な是非論は、問題の本質を見誤らせる

 

 一時は姿を消していたと思われていた飲みニケーションという言葉が再び注目を集めているという。解説は不要かもしれないが、この言葉は、「飲みに行く」という言葉と「コミュニケーション」を組み合わせた造語で、飲み会を通じて会社内での親睦を深めることを指している。いかにも昭和的な響きの用語だ。

nomikai

 バブル崩壊後、長く不況が続いたことや、価値観が多様化してきたことなどから、社内旅行やゴルフと同様、企業内で積極的な飲み会が開催される頻度は少なくなったといわれていた。だが最近では、社員間のコミュニケーションを円滑にする目的で積極的にこれを活用する企業が増えてきているという。
 この風潮に対して、飲酒や宴席が苦手な人からは反発の声が上がっており、ネット上でも活発な議論が行われている。

 だが飲みニケーションが是か非かという単純論争は、日本の労働市場における問題の本質を見誤らせる可能性があるので注意が必要だ。

 お酒を介したコミュニケーションに一定の効果があることはよく知られており、飲酒が禁じられている国以外ではこれは共通理解といってよい。ただアルコールが苦手な人がいるのも事実であり、仕事上のコミュニケーションは職場で行うべきというのもまた正論である。

 よく外国企業は人間関係がドライでありこうした行事は強要されないという話があるが、それはまったくのウソである。外国企業では、上司の決定権が強いことが多く、上司がいわゆるボス猿タイプの場合には、酒席はもちろん家族同伴の旅行まで強要されるケースもあり、断れば確実に出世に不利になる。一方、そうしたイベントを一切行わない職場も多数存在している。
 これは酒席だけに限った話ではない。米国では日本など問題にならないくらいドレスコード(服装規定)が厳しい会社はいくらでも存在するし、一方、シリコンバレーのように服装や出社時間が完全自由というところもある。東部の保守的な会社でまともに挨拶ができなかったら一発でクビになるだろう。その意味では、むしろ日本企業の方が社員の振るまいに対する寛容性は高いという解釈も成立する。

 要するにこの問題の本質は選択肢の確保にある。酒席が頻繁にある企業が嫌であれば、そうでない企業に転職すればよいのだが、日本ではこうした転職市場の整備が不十分だ。日本でも転職が一般的になってきたとはいえ、依然として新卒一括採用、プロパー中心である点は変わらない。よほど能力のある人でない限り、転職は不利になることが多いというのが現実である。

 つまり日本の企業社会では、労働者の側に自由な選択肢がなく、一度入った会社の社風が半永久的に強要される。そのような労働環境であるならば、多様性を重視し、仕事上のコミュニケーションは勤務時間中に限定すべきという考え方には一定の説得力があるといってよいだろう。

 グローバリゼーションを象徴する言葉のひとつとして、しばしばダイバーシティ(多様性)が取り上げられることがある。だが多様性という言葉には、選択肢を確保するという意味も多分に含まれている。固定化された集団内において多様性を無理に追求するよりも、嗜好が合う人と自由にコミュニティを作れる社会を目指した方が、最終的に社会全体の多様性を実現しやすいはずだ。

 - 社会, 経済 , , ,

  関連記事

kosobiru
日本の1人あたりGDPは14位を維持。だがこれは円高でかなりお化粧されている

 内閣府は25日、2011年度の国民経済計算確報を発表した。それによると2011 …

toshiba02
東芝不正会計問題で新日本監査法人に重い処分。スケープゴート捜しの声も

 東芝の不正会計を見過ごしたとして、同社の監査を担当していた新日本監査法人に重い …

lng2
米国が天然ガスの日本輸出を許可。これが経済や政治にもたらすインパクトは大きい

 米エネルギー省は5月17日、日本に対する天然ガスの輸出を許可すると発表した。テ …

bitcoin
米当局がビットコインを事実上公認。日本は巨額の富を失ったかもしれない

 米内国歳入庁(IRS)は2014年3月25日、仮想通貨ビットコインに関する税務 …

3946377
最近注目を集める金本位制復活論。だが日本人にこれを導入する覚悟があるとは思えない

  米国大統領選挙が終了しオバマ大統領が再選されたことで、当面現状の金融政策が維 …

nenkintecho
増やすも地獄、減らすも地獄。年金財政は袋小路に入りつつある

 年金制度改革が袋小路に入り込んでいる。年金の国庫負担増額のメドが立たないことか …

barroso02
EUが加盟6カ国の財政目標を緩和。とうとう緊縮路線からの転換を表明

 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は5月28日、フランスやスペインなど …

imf201601
IMFの世界経済見通し。中国のくしゃみでロシアとブラジルが高熱ダウン

 IMF(国際通貨基金)は2016年1月19日、世界経済見通しの改定値を発表した …

g8
G8でグローバル企業の租税回避対策が骨抜きになってしまう理由

 シリア問題と並んで主要国首脳会議(G8サミット)の議題の一つであった租税回避問 …

dokushogakusei
大学生の4割が読書時間ゼロ。だが本離れに拍車がかかっていると断言するのは早い

 大学生の約4割は読書時間がゼロであることが、全国大学生協連(東京)の「学生生活 …