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オバマ政権の関心は経済しかない。一般教書演説から占う米中関係と日米関係

 

 米国のオバマ大統領は2014年1月28日、米議会において一般教書演説を行った。演説のほとんどを経済問題に費やし、安全保障問題についてはごくわずかしか言及しなかった。中国の脅威については一言も触れておらず、内向き志向を強める米国の現状を如実に反映した形となった。

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 米国は日本と異なり厳格な三権分立制度を採用している。このため通常は大統領が議会で政策について説明することはない。一般教書演説は、大統領が議会に対して施政方針を示す数少ない機会である。
 もっとも一般教書演説は全国にテレビ中継されるため夜の時間帯にわざわざ設定されている。議会に対する説明というよりも、全国民に対する大統領のメッセージという色彩が強い。ある意味では、その政権の方向性がもっとも顕著に示される場ともいえる。

 今回の一般教書演説で驚きだったのは、オバマ大統領が冒頭において「世界のビジネスリーダーが投資先として選ぶのはもはや中国ではない。この米国である」と宣言した点である。
 米国では、中国は最大の投資先であり、もっともビジネスチャンスに溢れた場所であるという認識が強い。テレビドラマなどでも当たり前のように中国に投資する話が出てくるくらいだ。米国は今も昔も世界最大の経済大国だが、少なくともここ10年はフロンティアとしての役割は中国が担っていたと認識されている。オバマ大統領は世界経済のフロンティアとしてのポジションを中国から取り戻したと宣言しているわけであり、米国経済の成長力に対する自信の程がうかがえる。

 実際、米国経済は順調そのものである。米国はかつて、巨額の貿易赤字と財政赤字に悩まされてきたが、それはすでに過去の出来事になりつつある。昨年後半から米国の貿易赤字は劇的に改善してきており、税収の増加も進み、財政再建にもほぼメドがついた状況にある。オバマ政権は、ここで一気に米国経済のアクセルを踏み、成長を加速させることに専念しようとしている。

 演説では、シェールガス革命によってエネルギーの自給が可能となることや、自由貿易の拡大が、中小企業も含めた米国のビジネス全体に恩恵をもたらすことが強調された。オバマ政権は、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に中国を引きずり込み、最終的には米欧FTAと連携させ、世界統一市場を実現したい構えだ。

 アフガニスタン問題やイラン問題などは、後半のごくわずかな部分でしか言及されず、中国の脅威に至っては一言も触れなかった。
 日本国内では、中国による脅威の高まりから、米国の外交的な支援を期待する声が大きい。だが教書演説を聴く限り、オバマ政権の関心は経済に集中しており、安全保障の優先順位は低い。もしそうだとすると、尖閣諸島問題や歴史認識問題などにおける日本に対するスタンスは、すべて米中の経済交渉の行方次第ということになる。
 米中が急接近し日本がハシゴをはずされることについて過度に警戒する必要はないが、無条件で米国が外交的な圧力を中国にかけてくれるという無邪気な期待は持たない方がよい。

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