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本来の趣旨とは正反対。法人税減税議論は活力を削ぐ後ろ向きな話題ばかり

 

 法人税の実効税率引き下げの財源として、企業の赤字繰り越しを縮小する案が浮上している。甘利経済財政相が閣議後の記者会見で明らかにした。

amari 赤字繰り越しの縮小は、法人税の実効税率引き下げを実現するための苦肉の策といえるが、繰り越しが縮小されれば、ベンチャー企業に代表されるような、新規性が高く、すぐに黒字化が見込めない事業はますます不利になる。
 本来、法人税の改革は産業を活発化させるためのものである。だが、既得権益を持った企業に有利になる租税特別措置が据え置かれる可能性が高まるなど、後ろ向きな話題が続いているのが現状だ。

 現在の税制では、企業が赤字を出すと、その赤字額は次の期以降に繰り越すことができる(最大9年)。このような仕組みになっている理由は、新規性の高い事業に対して積極的に投資することを後押しするためである。
 新規性の高い事業は、スタートしてすぐに利益が出る可能性は低く、収益化までに時間がかかることが多い。初期投資で発生した赤字を繰り越すことができれば、その後利益が出てきた時に、税金を少なくすることができるので、投資の回収が容易になる。この制度があるおかげで、企業はリスクの高い事業にも積極的に挑戦することができる。この制度は、新しい時代を切り開くベンチャー企業には不可欠のものといえるだろう。

 だが今回検討されている措置はこれとはまったく逆のものである。法人税の実効税率を引き下げると、当然のことながら税収は減少してしまう。財務省は減税に反対しており、法人税率を引き下げる場合には、課税ベースの拡大を強く求めている。
 課税ベースの拡大には、租税特別措置と呼ばれる特定企業のみに税制を優遇する措置を廃止するのがもっとも効率がよい。だがこの租税特別措置の多くは製造業と建設業に集中しており、経団連がこの廃止に猛反対している。苦肉の策として浮上してきたのが、赤字繰り越しの縮小というわけである。

 もし赤字繰り越しを縮小する形で法人税の減税が行われると、製造業を中心とした既存の大企業だけが利益を得て、ベンチャー企業や外資系企業は極めて不利な状況に追い込まれてしまう。法人減税の本来の趣旨は、産業を活性化し、外国からの投資を増やすことであったはずだ。だが向かっている先は、本来の趣旨とはまったく正反対という状況になっている。

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