ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

今回の株価下落はアベノミクス失望売りなのか?という議論が不毛である理由

 

 ここ数日、株価が急落していることについて、アベノミクスに対する失望が原因なのかをめぐり激しい議論が行われている。一部メディアがアベノミクスに対する失望が原因と指摘、菅官房長官が4日の記者会見でこれを否定するという少々異例の事態となった。

suga20140204

 新興国の通貨安をきっかけに1月以降、各国の株価が急落する事態となっている。確かに日本株の下落は激しく、年明けからの下落率は米国株が6%、欧州株(英国)は4%であるのに対して日本株は13%にも達している。

 一部メディアがアベノミクスに対する失望売りとの報道を行ったことから、その是非をめぐって議論が沸き起こっており、菅官房長官は4日午後の記者会見において、これを否定する発言を行った。
 菅氏は基本的にマーケットについてはコメントしないと前置きした上で「ここ数ヶ月でもっとも上昇率が高かったのは日本株である」と述べ、さらに「投資家というのは買ったら、売り、また買うもの」であり、今回の株安は成長戦略に対する失望ではないとの見解を示した。
 一方、甘利明経済再生相は同じく4日の記者会見で、「米国の状況に直接反応する必要はない」と述べ、米国株につられて日本株が下落していることについて疑問を呈する発言を行っている。

 今回の株安がアベノミクスの失望売りなのかについて判断するのはまだ早いが、間違いなく言えることは、日本の株式市場は自国の経済情勢で相場が形成できるような立場ではすでになくなっているという現実である。

 かつて東京株式市場はニューヨーク株式市場に次ぐ存在感を持っており、自分自身の経済情勢で相場を形成することができた。だが日本経済が長期低迷したことや、金融市場改革を進めなかったことなどから、日本の株式市場の地位は大幅に低下し、アジアのローカル・マーケットのひとつに成り下がってしまった。
 また、何より日本人自身が株を買わないため、自力で相場を形成することがほとんどできなくなっている。現在、日本の株式市場に投資をする外国人投資家の割合いは60%を超えており、しかもその多くがヘッジファンドなど、逃げ足の早い投機資金である。閉鎖的で魅力に欠ける日本市場に対しては、長期的なスタンスでじっくり投資するまともな海外の機関投資家は投資しなくなっているのだ。
 日本市場の動向はすべて海外の短期的な投機資金に握られており、今回のように、新興国の通貨が不安定になる事態となれば、当然のことながら日本株も一気に売られてしまう。

 自国民が自国の株式市場に投資をせず、逃げ足の速い外国からの投機資金に依存する市場というのは、まさらに脆弱な発展途上国の市場そのものである。一般に途上国の市場は資金の厚みがなく、値動きが激しくなる。日本の株式市場は、もはやこうした荒っぽい途上国市場と同じ水準であると考えれば、日本株だけが激しく値上がり、値下がりする理由も説明がつく。

 日本市場がこのような状況になったのは、バブル崩壊以後の20年間、目先の利益にこだわり、金融市場をはじめとする各種の改革を先送り(拒否?)してきた日本人自身に原因がある。その意味では、安倍政権の経済政策だけが原因というわけではない。
 あえて安倍政権に責任があるとするならば、今回の政権交代は、日本が構造改革を行う最後のチャンスであったにも関わらず、アベノミクスでは規制緩和をほぼすべて断念してしまったことくらいである。

 途上国マーケットと化してしまった日本株は、今後もこうした海外投機筋の影響を激しく受け続けることになる。この状況から脱却するためには、日本経済や日本の金融市場そのものを根本的に変革するしか方法はない。だが仮にそれを実行するにしても、長い時間と大きな痛みを伴うことになる。現状の政治的環境においては、それを決断する可能性は限りなく低いだろう。

 - 政治, 経済 , ,

  関連記事

toshiba201405
東芝が新経営方針を発表。原発依存リスクからは脱却か?

 東芝は2014年5月22日、経営方針説明会を開催し、2017年3月期に売上高7 …

jimbeam
サントリーが米ビーム社を1兆6500億円で買収。金額はかなり割高だが・・・・

 サントリーホールディングスは2014年1月13日、米ウイスキー大手のビーム社を …

skymark02
日本初のLCCだったはずのスカイマークが、LCCとの競争で経営難の皮肉

 国内航空3位のスカイマークの経営が悪化している。格安航空会社(LCC)との競争 …

abenomics600cho
首相がブチ上げたGDP600兆円という目標は、すでに出ている数字の言い換え

 自民党は2015年9月24日、両院議員総会を開き、安倍首相の党総裁続投を無投票 …

dentsu
電通の広告不正問題。AI社会になれば解決するが、その時に代理店は必要ない?

 広告代理店最大手の電通は2016年9月23日、インターネット上の広告に関して不 …

netaniyafugikai
ネタニヤフ首相が共和党の招きで議会演説。オバマ大統領は会談拒否

 イスラエルのネタニヤフ首相は2015年3月3日、米議会で演説し、オバマ政権が進 …

iot
IoTに関する産学官協議会が米国勢に合流。最悪のガラパゴスは回避したが・・・

 あらゆるモノをインターネットにつなげる「IoT」の分野において、日本勢が米国勢 …

shoten
出版取次の太洋社が自己破産。出版市場の縮小はどこまで続くのか

 出版取次の太洋社が2016年3月15日、東京地方裁判所に自己破産を申請した。出 …

feisubukkugamen
先進国でしか稼げないフェイスブック。今後どれだけ拡大できるか?

 SNS最大手の米フェイスブックは2015年1月28日、2014年10~12月期 …

kusuri02
混合診療拡大へ。金持ち優遇かどうかという単純論争は本質を見誤らせる可能性あり

 政府は規制改革の一貫として混合診療の拡大に乗り出す。現在、日本では公的保険を適 …