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国際収支を見れば、日本の輸出不振は1990年代から始まっていた事が分かる

 

 財務省は2014年2月10日、2013年12月の国際収支を発表した。最終的な国の利益を示す経常収支は6386億円の赤字となった。赤字となるのは 3カ月連続で赤字額も過去最大を更新した。季節調整済みの数値も赤字幅が拡大しており、慢性的な経常赤字体質にさらに一歩近づいたといえる。

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 経常収支が悪化している最大の理由は輸出の不振と輸入の拡大である。
 日本の製造業はグローバル化が進んだことで、国内から直接輸出するケースは年々減少している。また電機メーカーを中心に、アジア諸国からの追い上げが激しく、安価な部品や製品を輸入する割合いが高まっている。これによって輸出の減少と輸入の拡大が同時に発生し、貿易収支が悪化している。

 この状況に拍車をかけているのが、エネルギー価格の上昇である。日本は原発停止による電力不足を節電で対処しており、エネルギー輸入量はそれほど増えていない。しかし、ここ3年の間に原油価格は1.5倍に値上がりしており、これがエネルギー輸入金額の増大を招いている。 つまり貿易赤字の拡大は構造的な問題であり、単に原発を再稼働させるだけで解決できる問題ではないのだ。

 震災をきっかけに急に製造業がダメになったことについて訝しむ声も聞かれるが、ここ数年でいきなり製造業の競争力が低下したわけではない。実はこうした傾向はかなり以前から観察されていたが、製造業立国というスローガンが優先され、あまり顧みられることがなかっただけのことである。

 日本の貿易黒字がピークだったのは1990年代のことであり、2000年代に入ると貿易黒字の減少がすでに顕著になっていた。経常収支はおおざっぱに言えば、貿易収支に投資収益(所得収支)を加えたものだが、2005年には貿易黒字の額を投資収益が上回っていた。すでにこの時点で日本は製造業立国ではなく、お金でお金を生み出す不労所得の国に変貌していたのである。

 この実態を覆い隠すきっかけとなったのは実は米国のバブル経済である。米国は不動産価格が高騰し、国内では過剰な消費が横行した。これによって米国は日本から大量の製品を輸入するようになり、本来は輸出不振が始まっていたはずの日本の製造業を一時的に潤すことになった。日本では米国のバブル経済や過剰消費を批判する声が大きいが、米国バブルの恩恵を最も受けたのは、実は日本の製造業なのである。

 この一時的な好景気によって日本メーカーの体質転換は遅れ、それがリーマンショック、さらには震災によるショックなどで一気に問題が顕在化してきたというだけの話である。
 数字はある意味で非常に正直である。日本の製造業は世界一と自画自賛している段階で、すでに貿易黒字の減少は進んでいた。その教訓を現在に当てはめるなら、やはり日本が警戒しておくべきは経常収支の慢性的な赤字化であり、それに伴う国内の資金不足である。

 安倍政権は、政治的な思惑もあり、今のところ輸出を復活させるという従来型の経済政策を掲げている。だが、国債の消化余力が減少したり、資本の海外流出が顕著になってからでは時はすでに遅い。経常赤字の影響がまだ顕著になっていない今こそ、経常赤字を前提とした経済政策へ舵を切るタイミングである。

 - 政治, 経済 ,

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