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経常赤字転落でマーケットが混乱するという通貨マフィア発言の真意とは?

 

 経常収支の赤字転落で市場が混乱するかもしれないという、国際協力銀行の渡辺総裁の発言が話題となっている。渡辺氏は元財務官でいわゆる国際的な通貨マフィアの一員ともいわれる人物。通常は、立場上、マーケットの動きに言及することがないだけに、その真意をめぐって様々な憶測が流れている。

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 渡辺氏の一連の発言は、2014年2月14日の講演で出てきたもの。日本が3カ月連続で経常赤字になったことについて「日本の根源的な強さがひっくりかえるかもしれない」と述べ「2月の赤字ということになると、日本の体質が変わったと市場が認定する可能性がある」と分析した。さらには「3月には市場が混乱するかもしれない」と時期まで明示して、市場の混乱に懸念を表明している。

 経済学的に言えば、経常収支が赤字なのか黒字なのかは、経済成長にとってニュートラルである。だが政治的には経常赤字は「悪」と認識されているし、これまで経常黒字だった国が、赤字体質に転換すれば国内経済にそれなりの影響を与えることになる。したがって、渡辺氏のような立場の人物であれば、その本心はともかくとして「急激な経常収支の変化は好ましくない」といったあたりが教科書的な発言ということになるだろう。

 だが渡辺氏はあえて「日本の強さがひっくり返る」として経常赤字転落のマイナス影響が極めて大きいことを強調している。さらにマーケット関係者が驚いたのが、3月という時期まで明示して、市場の混乱を警戒している点である。

 海外のヘッジファンドをはじめとするいわゆる投機筋が、かなり前から日本円や日本国債を売るタイミングを虎視眈々と狙っていることは周知の事実である。円については量的緩和で円安が進んだものの、国債については金利が低くなる一方で、多くのファンドが売り崩しに失敗して撤退している。
 ファンドが次に狙うタイミングは、日本の経常収支赤字化である可能性が高く、渡辺氏の発言はそのあたりを意識しているのかもしれないと憶測を呼んでいるのである。

 市場の動きとは別に、渡辺氏が財務省出身であることから、財務省の意向が大きく影響しているとの見方もある。経常収支が慢性的な赤字となると、それは貯蓄投資バランスという観点から、貯蓄不足が想起されることになり、国債の消化余力に疑問符が付くきっかけとなりかねない。財政再建を最優先したい財務省にとって、金利の上昇は何としても避けたいところであり、経常収支の赤字転落に警鐘を鳴らしたという解釈である。

 3月に市場が荒れるのかどうかはともかく、日本が慢性的な経常赤字体質に向かっていることは事実である。こうした状況において、単なる輸出振興策という従来型の経済政策は意味をなさない。安倍政権はそろそろ現実を見据えた経済政策に舵を切る必要が出てくるだろう。

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