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グーグルによる東大発ロボット企業の買収で危惧されること

 

 インターネット検索最大手の米グーグルが東大発のロボット開発ベンチャー「シャフト」を買収した経緯をめぐって波紋が広がっている。シャフトの開発には国費が投じられているが、官民ファンドである産業革新機構に追加支援を依頼したところ断られ、やむを得ずグーグルに売却することになったという。

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 国費を投じて開発された日本の優秀な技術が、いとも簡単に米国の軍事技術として買収されてしまったわけだが、こういったケースでは、国をあげて支援すべきという安易な声につながりやすい。
 だが日本でこうしたベンチャーを育成できない最大の原因は、産業革新機構に代表されるような、官主導でベンチャー支援を行う風土そのものにある。国をあげてベンチャーを育成したいのなら、むしろ国の関与を減らした方が効果的なのだ。

 シャフトの技術は、産業技術総合研究所での研究がベースになっており、日経新聞の報道によると、金額は明かされていないものの、その開発には国費が投入されているという。
 同社は、2013年12月に開催された米国のロボット競技会で優勝し、その前後にグーグルによる買収が発表された。同競技会は、米国防総省国防高等研究計画局が主催しているもので、その目的はズバリ、軍事用ロボットの開発である。

 シャフトは国内企業に資金提供を依頼したが断られ、官民ファンドである産業革新機構にも打診をしたもののやはり断られたという。グーグルだけが資金提供を申し出たことで買収に至ったとされる。
 こうした状況に対して憂慮する声が上がっているわけだが、もっとも危惧されるのは、国による支援体制をさらに強化せよという声が高まることである。これは完全に逆効果となる可能性が高い。

 日本では、事前に有望な分野を絞り込み、集中的に国家予算を投入すれば高い成果が得られるという認識が強く、特定分野を支援する政策が主流となっている(ターゲティング・ポリシー)。科学技術が未熟な途上国では有効に機能するが、本当のイノベーションを必要とする先進国ではそういった概念は通用しないというのが国際的なコンセンサスになっている。だが日本ではいまだにそうした途上国的価値観が根強い。

 官民ファンドである産業革新機構もその概念に基づいて設立された組織なのだが、官というもっとも保守的な組織が、将来有望な技術を見極め、計画的に育成することができるほど、イノベーションや国際競争の世界は甘くない。
 グーグルの創業者は勝手に創業し、民間のベンチャーキャピタルは純粋に営利目的でいち早く投資を決めただけのことである。国際競争力をつけるためには、競争環境を整備することに全力を傾け、あとは有望な技術が育つのを待つしかないのである。

 今回の事例をきっかけに支援体制の強化が叫ばれれば、経済産業省はさらに予算を増額し、新しい官民ファンドや支援組織を作るだけである。国による支援体制が強化されればされるほど、リスクを取る文化はなくなり、シャフトのような会社に出資する企業やファンドは少なくなるだろう。

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