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1月の貿易赤字が何と倍増。最大の原因は輸出不振であってエネルギー問題ではない

 

 財務省は2014年2月20日、1月の貿易統計を発表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆7900億円の赤字となり、赤字幅が前月比でほぼ倍増となった。2013年の月平均の貿易赤字額は約1兆円なので、想像を超えるペースで貿易赤字が拡大している。2014年に日本が慢性的な経常赤字体質となるのはほぼ確実な状況となってきた。

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 赤字額が急拡大した原因は輸出の大幅な減少である。輸出は数量ベースで前月比15%、金額ベースで14%も減少した。数量ベースでは、円高による輸出不振がピークとなった時期の水準に匹敵する低さである。
 安倍政権はこれまで円安によって輸出が回復することを前提にした経済政策を実施してきた。だが以前から指摘されていることだが、現在の環境では円安になったからといって輸出が急回復することはない。
 日本の製造業はすでにグローバル化が進んでおり、国内で生産して海外に輸出するというモデルはすでに過去のものとなっている。また電機業界を中心に日本メーカーは長年の不況で企業体力が落ちているほか、基本的なオペレーション・コストが依然として高い。また製品戦略上の問題もあって、円安をきっかけに思い切った値下げでシェアを獲得するという戦略がとりにくい。このため輸出数量が伸びず、円安の効果が限定的になってしまうのだ。

 一方、輸出の減少ほどではないが、輸入の増大も続いている。各品目でまんべんなく輸入の増加が見られることから、特定品目の輸入増大が貿易赤字の原因ではないことが分かる。日本の経済構造そのものが変化し、コモディティ化した製品や部品は輸入する体質に変わっていると考えるべきである。

 一部では、原発停止によるエネルギー輸入が赤字の原因とする論調が見られるが現実は異なる。原発停止後、火力発電所の燃料となるLNG(液化天然ガス)の輸入数量は1割しか増えていない。しかも原発停止の直後に輸入量が増えただけで、その後はずっと横ばいが続いている。LNGの輸入増大は、ここ半年の貿易赤字急拡大の説明にはならない。
 さらに原油にいたっては、輸入量はたった1.4%しか増えていない。エネルギーの輸入金額は増大しているが、それは市場価格の上昇によるものであって、原発停止が直接の原因ではない(LNG価格は原発停止によって価格がつり上げられている面が否定できないが、LNGはエネルギー輸入額全体の25%を占めているにすぎない)のだ。

 原発の再稼働問題が、日本経済にとって重要なテーマであることは間違いない。だが、貿易赤字拡大を原発の問題と混同してしまうことは非常に危険である。もしそうなってしまうと、貿易赤字の本当の原因が認識されるまで、さらに時間がかかってしまい、対応が後手に回る可能性がある。

 安倍政権は今のところ、輸出振興策を軸に貿易赤字を縮小させようとしている。だがこの方策はうまく機能しない可能性が高い。今後は経常赤字になることを前提に、良質な海外資本が日本に流入してくるよう、国内市場を整備することがより重要である。具体的には過剰な政府の規制を緩和することや、市場の透明性を高めるといった措置などが考えられる。

 一方、急激な経常赤字への転換は国内産業にも大きな影響を与えることになる。これを緩和させるためには、日本の投資収益(所得収支)を増加させることが重要となってくる。具体的には米国債に偏っている海外証券投資のポートフォリオ見直しや、ソフトバンク、サントリーに代表される海外大型M&Aを促進させる政策の実施などが必要だろう。

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