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オバマ大統領がこのタイミングでダライ・ラマ14世と会談した理由

 

 オバマ大統領は2014年2月21日、訪米中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談した。オバマ大統領は過去2回、ダライ・ラマと会談しているが、習近平体制になってからは初めてとなる。中国はダライ・ラマが米政府要人と会うたびに抗議しており、今回も中国側が激しく反発している。

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 ダライ・ラマ14世は1950年の人民解放軍によるチベット侵攻やその後のチベット動乱をきっかけにインドに亡命し、チベット亡命政府のトップとして君臨してきた。かつては、欧米各国を中心に中国によるチベット弾圧を非難する声も大きかったことから、1989年にはノーベル平和賞も受賞している。

 だが中国が台頭してくるにつれて、チベットの立場は弱体化が進み、中国との貿易を最優先したい欧州各国は基本的にチベット問題に触れないという方針に転換してしまった。米国もクリントン政権前期の時代までは、中国の人権弾圧について基本的価値観の相違というレベルで非難していたが、最近では、どちらかというと対中交渉の材料として認識されるようになっている。

 オバマ政権はこれまで中東に軸足を置いていた米国の軍事力をアジア太平地域にシフトするいわゆるリバランス戦略を進めている。中国はすでに交渉相手であり、根本的に対立する存在ではなくなっている。今年は米中の国交正常化35周年という節目の年にあたっており、現在、米国と中国は双方の立ち位置に関する包括的な交渉を進めている最中である。オバマ大統領がわざわざダライ・ラマ14世と会談するのは、米中交渉をより有利に進めるためのひとつのカードと考えられる。
 オバマ大統領は「チベットの人権保護を支持する」と述べたものの、「チベットの独立は支持しない」とし、中国側へ一定の配慮を示した。またダライ・ラマも米中関係の重要性について認める発言をしており、以前のような中国との絶対的対立という雰囲気は薄れている。

 一方、中国も、チベット問題が致命的な影響をもたらすとはもはや考えおらず、抗議も形式的なものになっている。ただ、習近平氏個人にとってチベット問題は少々微妙であり、米国にとってはよい交渉材料となっている。それは、ダライ・ラマの存在が習氏自身にとってアキレス腱だからである。

 中国共産党幹部の2世、3世を中心にした派閥である太子党に属する習氏は、国家副主席を務めたこともある習仲勲氏を父親に持つ。習仲勲氏は比較的リベラルな思想の持ち主といわれ、ダライ・ラマとも親交が深かった。ダライ・ラマは習仲勲氏に腕時計を贈ったことがあり、習氏も、その時計を愛用していた。このため文化大革命では、毛沢東主義者から激しく攻撃され16年間も身柄を拘束されている。息子である習近平氏も文化大革命の際には「下放」(地方の農村に懲罰的に追いやること)されていたが、その原因の一つが父親のダライ・ラマとの関係なのである。

 このため、習氏はチベット問題に対して特に神経質といわれている。このような状況で、オバマ大統領がわざわざダライ・ラマと会談したことは、米中交渉がヤマ場を迎えつつあるということを示唆しているのかもしれない。

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