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エネルギー基本計画の政府案決定を霞が関文法で解釈すると?

 

 政府は2014年2月25日、原子力関係閣僚会議を開催し、新しい「エネルギー基本計画」をまとめた。焦点となっていた原発については、「重要なベースロード電源」と位置づけ、安全基準に適合すると認められたものについては再稼働を進める内容を盛り込んだ。

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 エネルギー基本計画の内容をめぐっては、原発推進を基本方針とする経済産業に対して、世論の動向を気にする与党内部との調整が続いていた。こうした文書をめぐる攻防では、霞が関文法や霞が関修辞学ともいわれる、文章の書き方が大きな意味を持ってくる。
 リーダーシップに欠ける日本の政界では「文書に書いてある」という理屈で官僚に押し切られることが多く、文言の表現をはっきりさせておく意味は大きい。逆に官僚にとってはどのような文言を盛り込むのかに自らの省益がかかっているということになる。

 今回のエネルギー基本計画では、原案の「基盤となる重要なベース電源」から「基盤となる」という部分が削除され、「重要なベースロード電源」と変更された。ベースロード電源の意味について経産省では、昼夜を問わず一定の電力を供給できるという意味と説明しているようだが、これは電力業界でいうところの一般的なベースロード電源の意味と同じである。

 前回の「ベース電源」という言葉は、これよりももう少し幅の広い解釈が可能である。つまり国を支える基幹電源という意味である。もしそういう解釈が可能であれば、今回の表現は、霞が関的な文脈では経産省の敗北ということになる。電力業界でいうところのベースロード電源という解釈では、時間変動の影響を受けない最低水準の部分しか原発でカバーすることはできなくなるからだ。
 本来なら「基盤となる重要なベース電源」という記述は譲らず、譲歩案として「具体的な依存度については随時検討を行う」などの記述にできれば、官僚の交渉としては100点満点ということになる。検討だけすればよいので、依存度を変更する必要はないからだ。

 今回は表現の後退を経産省が受け入れた形だが、官僚はそうそう簡単には引き下がらない。今度は、最低水準の部分をどの程度にするのかということについて審議会などで議論させ、なるだけ多い電力が必要という文脈で再稼働や新規原発の建設を進めてくる可能性が高いと考えられる。

 政策はその本質が重要であり、文書の些末な表現など、本来はどうでもよい話である。だが先にも触れたように、日本における政治のリーダーシップは弱く、文書に書いてあるという理由で官僚に押し切られることも多い。このため、党と官僚、あるいは審議会と官僚といった利害が対立する場面では、一言一句の表現が極めて重要な意味を持ってしまうのだ。

 審議会の人選をするのは官僚だが、広く意見を募ったというアリバイを作るために、一定数は官僚の描く方向性とは異なる主張の人物も選ばれる。だが、民間の有識者の中にはこうした霞が関文法に疎い人も多く、官僚にとって有利な文言が勝手に盛り込まれ、審議会の議論が骨抜きにされるケースは無数にある。

 今回の政府案が閣議決定されれば、それは政治的な決断なので、政府与党は基本的にこの方向性を守る必要が出てくる。今回は一定の条件下で再稼働を容認した形だが、今後はこの範囲で経産省が実務を遂行していくのか、与党はしっかりとチェックしていく必要があるだろう。

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