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米国からのプルトニウム返還要請は何を意味しているのか?

 

 日本政府が、米国から研究用として提供されていた高濃度プルトニウムを、米国に返還する方向で調整に入っていることが明らかとなった。オバマ政権の核軍縮政策の一環とされているが、日米安保の弱体化が原因とする見方もある。

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 日本は、研究用として米国からプルトニウムを提供を受けていた。このプルトニウムは、茨城県東海村にある高速増殖炉の実験施設「FCA」(写真)で使われおり、同施設で得られたデータは、高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」を設計する際の基本データとして活用されている。

 これまで日本の原子力政策は、核燃料サイクルの構築を基本原則としてきた。核燃料サイクルとは、原子力発電所の使用済み燃料を再処理し、その中からプルトニウムを抽出して燃料として再利用する一連のプロセスのことを指す。ウラン燃料のほぼすべてを輸入に頼る日本としては、核燃料サイクルの構築によって燃料の利用効率を高めることが期待されていた。
 だが現実には、核燃料サイクルの構築はうまく進んでいない。核燃料サイクルの中核となる高速増殖炉もんじゅが技術的トラブルで運転停止した状態にあるほか、青森県六カ所村の再処理施設はまだ、操業を開始するメドが立っていないのだ。

 2014年2月25日に決定したエネルギー基本計画の政府案では、核燃料サイクルについて、「着実に推進する」とした原案から一歩後退し、「柔軟性を持たせながら対応を進める」に修正された。基本計画が最終的にどのような形に落ち着くのかは分からないが、推進一辺倒の状態でなくなったことだけは確かである。

 核燃料サイクルが順調に構築できないとなると、日本国内で、核兵器への転用が容易なプルトニウムの蓄積が進むことになる。米国は返還を求める理由を明らかにしていないが、こうした事態への懸念表明の一つとして返還を求めた可能性がある。

 だが現実にはもっと深刻な背景があるとの見方も一部には存在している。それは日米安保の弱体化である。研究目的とはいえ、米国が300キロ(核兵器数十発分)ものプルトニウムを日本に提供するのは、日米安保という強固な軍事同盟が機能していればこそである。
 日本と米国との間には、日米原子力協定という条約も結ばれており、米国は日本が核燃料を再処理してプルトニウムを取り出すことを認めている。しかし、米国がすべての同盟国に同じような条件を認めているわけではない。米国が韓国と結んだ原子力協定では、韓国が独自に核燃料の再処理をすることを禁止していることを考えれば、日本の立場は米国にとって特別なものだったと考えてよい。

 日本と米国は現在、歴史認識問題などをめぐってギクシャクした関係にある。米国の政権中枢では日本に関する知見を持つスタッフが減少しているといわれており、こうした状況が日本への信頼低下とプルトニウム返還要求につながったという解釈である。

 核燃料サイクルを構築するということは、日本にその意識があろうがなかろうが、国際的には核兵器の保有に限りなく近づくことを意味している。核燃料サイクルの位置付けが不透明なまま推移している現状は、日本の安全保障上、好ましくない事態であることは間違いない。米国からのプルトニウム返還要求は、こうした事態への警鐘と解釈した方がよいだろう。

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