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欧州では移住する農業従事者が増加中。そう簡単ではない農業の競争力強化

 

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の閣僚会合で日米は合意に至らず、結論は再び先送りとなった。日本ではTPPを締結すれば、国内の農業が壊滅的な打撃を受けるといわれている。一方、農業を産業化し国際競争力を付ければTPPを締結しても農業への影響を最小限に抑えられるとの見解もある。両者の溝は大きく、いまのところ国論が二分した状態といってよい。

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 EU(欧州連合)という巨大な自由市場を構築した欧州では、農業のあり方も大きく変わってきている。欧州と日本ではまるで状況が異なるため、単純な比較はできない。だが欧州で起こっていることは日本にとっても参考になるだろう。

 現在、欧州では農林水産業に従事する人の移住が活発になっているという。オランダやドイツなどの工業国からフランスに移住し、そこで農業を続ける人や、逆にフランスからアイルランドに移住してカキの養殖を行うケースなどがある。

 移住する最大の理由はコストである。同じEUでも農業政策は各国によって異なっており、農地の価格にも大きな違いがある。農地価格は条件によっても変わるので一概には比較できないが、ドイツや英国における1haあたりの農地価格は240万円程度といわれる。土地が狭いオランダではさらに高く670万円もする。一方フランスは100万円とかなり安い(ちなみに米国は50万円程度。日本は1000万円以上と法外に高い)。

 こうした農地価格の高い地域から農家が土地を売りフランスなどに移住して農業を続けている。フランスは農業や漁業が盛んだが、フランスの農家や漁師は安泰かというとそうでもない。フランスはカキの養殖が有名だが、広い養殖スペースを確保できず、近年フランス産カキの競争力は著しく低下している。フランスのカキ養殖を行う漁師の中には、安価に生産できるアイルランドに移住する人もいるという。フランス産生ガキと白ワインは定番の組み合わせだが、実はフランス人の漁師がアイルランドで作ったものが増えているのだ。

 フランスに移住する農家の中には、オランダから来る人も多いといわれるが、オランダは工業国であると同時に、実は米国に次いで世界第2位の農業大国でもある。その農業大国オランダからなぜ農家がフランスに移住するのかというと、オランダの農業のあり方が他とは異なっているからである。

 オランダは、観賞用植物、タバコ、チーズなどを大量に輸出しているが、同じ品目を大量に輸入もしている。つまりオランダの農業は工業的な加工貿易が中心となっており、純粋な農業とは少しイメージが違う。農地や品目の集約化も進んでおり、規模のメリットを追求できなかった農家がフランス移住などを選択しているという構図が浮かび上がる。

 米国やオーストラリアのように広大な農地を持つ国以外は、コストで勝負することは難しい。オランダのように農業を工業化するという方法もあるが、日本には安価に原料を調達できる周辺国がない(アジアは基本的に食糧難で逆に輸入を増やしている)。また日本自身がアジアで最大の消費市場であるためそもそも輸出が期待できないという事情もある。

 国の規制で日本の農業ががんじがらめであることは事実だが、農業の競争力を強化して国際市場で生き延びるというのは、そうそう簡単なことではなさそうだ。

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