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法制局長官が「番犬」であるという一連の騒動から、議会制民主主義の本質を考える

 

 集団的自衛権に関する憲法解釈の見直し問題で注目を集めている小松内閣法制局長官が、同氏を「安倍政権の番犬」と指摘した共産党議員の発言に対して異例の反論を行った。

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 共産党の小池晃議員が4日の参院予算委員会において、小松氏に対して「憲法の番人なのだから安倍政権の番犬みたいなことはしないでほしい」と指摘。小松氏は5日、社民党議員の質問に答える形で「番犬との指摘を受け入れることはできない」「国家公務員にもプライバシーや名誉に関して人権が保障されている」と反論した。

 小松氏を揶揄した小池氏の発言は確かに褒められたものではないが、小池氏の発言とそれに対して色をなして反論した小松氏の一連のやり取りは、内閣法制局が実質的に憲法解釈を行ってきたという戦後日本の異様な光景を象徴しているという意味で非常に興味深い。

 集団的自衛権をめぐる政府の公式見解は、「憲法は個別自衛権を否定してるわけではなく、自衛のための必要最小限度の戦力を持つことは合憲だが、集団的自衛権の行使は認められていない」というものである。この政府見解は、歴代内閣の国会答弁などと大きく矛盾しないよう内閣法制局が緻密に組み立てたものである。

 内閣法制局はあくまでの内閣スタッフ組織であり、その職員は一公務員として政治家の指示のもとで作業を行う。
 だが日本は議会制民主主義や三権分立が十分に発達しておらず、行政府の官僚が主導する政治が続いてきた。このため、行政府の一組織である内閣法制局が実質的に日本の憲法解釈を担うという奇妙な状況となっている。憲法解釈をめぐる議論においても、純粋な憲法問題としてではなく、従来の内閣法制局の見解と矛盾することを理由に、見直しに反対する人が多いというのが現実なのである。
 憲法解釈の見直しを進めたい安倍首相が、何度も「最高責任者は私です」という答弁をしているのは、一介の公務員にすぎない内閣法制局長官が実質的な解釈権を担っているという状況に苛立っているからである。

 小池氏の質問も基本的にはそうした解釈に沿ったものとなっており、法制局長官を「憲法の番人」であると指摘している。憲法の番人ともあろう人が安倍氏の番犬でどうする、という趣旨である。

 だが小松氏はこれに対してプライドを傷つけられたのか、「公務員にも名誉がある」と色をなして反論した。国会での番犬騒動といえば、1960年代椎名悦三郎外務大臣が日米安保と在日米軍について国会で問われ「米国は日本の番犬みないなもの」と発言した事件が有名である。問題発言であると野党議員に指摘された椎名氏は何と「言い直します。番犬様であります」と再答弁している。

 小池氏の頭の中には、椎名氏の番犬発言があったのかもしれない。椎名氏の発言は確かに失言だが、相手は超大国アメリカであり、発言した本人も国を背負う政治家である。不謹慎かもしれないが、政治責任を負う人のみに許されるユーモアといってよいだろう。小池氏の場合も、相手がもっとスケールの大きい政治家であれば、番犬発言に対して皮肉で返したかもしれない。

 だが相手は一介の公務員の小松氏である。基本的人権まで振りかざして抗議してしまった。この事件は、本来、国民から選ばれたリーダー同士でこそ許容される放言が、そうした器を持ち合わせているはずもない公務員に向かってしまったことに原因がある。

 一介の公務員に過ぎない法制局長官が、かつての革命政党議員による辛辣な質問の対象になるということ自体がやはり異常なことである。立法や司法が実質的に機能せず、行政府のみを中心に国政が進められてきた歪みはこのようなところにも表れるのかもしれない。

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